2015年3月12日木曜日

環境ビジネス成長要因 その1


 環境ビジネス市場規模は現在、85兆(2012年)に及び雇用規模は約240万人に達している。2020
年には約100兆円という予測も出ている。
 その成長要因として国内はもちろん、今後ますますクローズアップされるであろう発展途上国を中心とした公害対策等を目的とした海外市場が挙げられる。これらの国々では、わが国の公害に対処する技術を始め省エネルギー技術、またリサイクル技術など、実績ある環境技術の貢献が期待できるはずである。特に発展途上国では、これから大気や水質、土壌などの汚染といった公害問題が懸念される。こうした国々の公害の改善対策にわが国の公害対策技術、ノウハウ、経験等が生かされてくるものと思われる。こうした分野の市場は未開拓分野多く残され、市場開拓が進んでいないのが実情なので、ここでわが国の環境技術が市場のリーダシップをとっていくことは十分期待できそうだ。
 すなわち、現在の市場規模に、例えば海外ビジネス分の20~30兆円が加わることは、まったく夢ではない。ただし、このときの課題は、自動車、家電メーカーの場合は常に海外市場相手に慣れているのでグローバルな戦い方の術を知っているが、環境技術の場合は、期待される市場が十分見込まれるとはいっても、未経験に近い。未知の部分が大きいので、決して予断は許さない。重要なことは、日本には環境に関わるビジネス性をもった技術は前回述べたようにすでに数多く用意されているので、海外市場ニーズに対してこれら有利な条件を上手に生かすことだ。

公害やオイルショック等過酷な体験で培われてきたわが国の環境技術

それでは、わが国の環境技術は、今日までどう醸成されてきたのであろうか。
 わが国は、世界に類を見ない深刻な公害、オイルショックなどを体験してきている。日本が経済成長を始めた1960年代における公害問題が表面化した頃は、あの水俣病を始めイタイイタイ病、四日市や川崎の大気汚染など、世界に冠たる「公害大国」とまでいわれた時代であった。実はこのときわが国では、国と産業界が官民一体で約30兆円を投入、公害への対処技術開発に取り組んだのである。過酷な実体験に基づき、曲がりなりにも公害を克服した対策技術が現在、 50年の歴史に根ざした日本が世界に誇る環境技術の「礎」になっているといっても、過言ではない。
 一方、1970年代は中東戦争が勃発、わが国もそれによる第一次オイルショックを体験した。すなわち、これまで不自由なく恩恵を受けてきた石油が海外から入ってこなくなったのだ。そこで当時、通商産業省(現・経済産業省)が取り組んだ対策が、第一に石油の備蓄、そして第二に省エネルギーである。実は、いまでこそ当たり前になったいわゆる「省エネ」という言葉は、この時点において誕生したのだ。だが当時の省エネは、例えば節電など、極力電力消費を控えるという“節約”に等しいものであった。この省エネへの取組みが、「ムーンライト計画」(1978年~)と呼ばれた。そして、このとき通商産業省は、「サンシャイン計画」(1974年~)も開始した。主なものに石油エネルギーの代替として太陽光発電開発への積極的な取組みがある。同時に、今注目されている家庭用、自動車向けの燃料電池開発への取組みも行った。なお、省エネに関する技術は40年という歴史に根ざしている。
 このように、当時のエネルギー政策は、政府・通商産業省が国の舵取りをしっかりと行っていた、といまでも業界の評価は高いものがあるようだ。現在のように方針のぶれるエネルギー政策とは大違いである。

キーとなる環境ビジネスへの4つの参入形態

環境ビジネスの形態は、かつてはB to G(Business to Government)すなわち公共事業が中心であった。現在、本流はB to B(Business to Business)だ。このB to Bにも二つのパターンがあって、第一が各企業における環境改善活動である。すなわち生産ラインのグリーン化あるいは自らが販売する製品のグリーン化などがあるが、このためにさまざまな関連装置が必要とされる。これは大きな市場として期待される。第二は、各企業が環境ビジネスに参入したい場合だ。たとえば、大規模太陽光発電・メガソーラの事業に取り組みたい場合、当然大量の太陽電池が必要になってくる。そこに環境ビジネス関連のベンダーにはビジネスチャンスが生まれてくる。
 さらに今後大いに期待される新しい市場はB to C(Business to Consumer)、すなわちコンシューマ(消費者)向けだ。食や毎日使用する生活用品などの安全性で、環境や健康によいもの、それほど資源を使用しないものなどである。こうしたものを使ういわゆるグリーンコンシューマ(緑の消費者)は、都市部を中心に増殖しつつある。もちろん、あの東日本大震災以降も影響はしている。まだ、未開拓分野ではあるが、拡大の兆候はみられる。