2016年2月26日金曜日

環境ビジネス、ここがポイント

環境ビジネス、ここがポイント

大気,水質,土壌等の自然環境の保全,再生可能エネルギー(新エネルギー)の創出,エネルギーの省エネを含む高効率利用,資源・廃棄物の有効利用等に寄与する財(技術・製品)およびサービスの提供を目的とする環境ビジネスは,「環境の世紀」といわれる21世紀において,有望な成長産業として大いに期待されている。
 その成長性は,環境省の環境産業市場規模調査によると約93兆円及ぶ。一方,世界市場においても,日本企業の保有する公害防止,省エネルギー技術等の環境技術は,世界のトッププランナーとして優位性を確保し,海外に向けて輸出量を拡大している。

 環境ビジネス市場は現在,第1次産業から第3次産業まで全産業に裾野が広がり,参入企業は約1万事業書をを超え,約900アイテムの事業が創出され、さらに2011年3・11の東日本大震災以降の災害廃棄物処理の他,スマートハウス、スマートタウン等原子力発電に頼らない再生可能エネルギーや省エネ・節電,自家発電,蓄電等の市場が急速に拡大している。いってみれば,全員参加型の市場として環境ビジネスが形成されているのだ。
 そうした国内の多様な環境ビジネス市場で,これからも期待できる成長分野として挙げられるのが「資源確保」に係る資源分野だ。
 資源の大半を海外に依存する資源少国である日本にとって,資源確保は,今も昔も最重要課題である。まして,21世紀は既存資源の多くが賦存量の減少へ向かい,世界的な資源不足,価格高騰などが避けられない中で,日本経済のサステナビリティ(持続可能性)の観点から,避けて通れないのが「資源確保」にほかならない。日本経済の動向と密に連動する環境ビジネス分野においても主要テーマは「資源確保」であり,見逃せないビジネスチャンスでもあるのだ。

<エネルギー資源の確保>
●国内調達可能なエネルギー供給の確立
 エネルギー資源の95%以上を海外に依存する日本は,国内調達可能な純国産エネルギーの資源開発が急務である。海外依存に頼るエネルギー資源の多くは枯渇性が高く,採取・利用する過程で環境負荷の高い化石燃料として利用される”地下資源”である。そうした地下資源に対して,自給可能なエネルギーとして考えられるのが,太陽光・熱,風力,バイオマス,小水力,地熱などの再生可能エネルギーである地上資源である。しかも,これらの地上資源の特徴は,いずれも地下資源と比べ環境負荷が著しく少ないクリーンな資源であることだ。
 日本にとって「地産地消」の再生可能エネルギーの利用促進こそが,資源セキュリティからの観点からも重要課題であり,脱原発や温暖化の要因のひとつであるCO2の排出削減につながるのだ。現在,原発事故や再生可能エネルギーの全量買い取り制度実施などが強い追い風になり,再生可能エネルギー関連市場が急速に拡大中だ。将来的にわたり,再生可能エネルギーは化石燃料などの従来型エネルギーとのベストミックスを図りながら導入量を増大させていくことは確かである。それに伴い,風力、地熱、バイオマス等再生可能エネルギー技術・事業開発の高度化が進む。普及拡大する太陽電池については,技術革新、コスト低減を図りながらも、まだまだ市場拡大の余地は十分残す。出遅れている太陽熱利用も徐々に普及しつつある。太陽熱を集熱器に集め温水や暖房の熱源とするもので,太陽熱温水器で給湯すればエネルギー変換効率(集熱効率)は40%以上で,夏場なら60℃以上の温水が得られる。一般家庭の他,温浴施設,福祉・介護施設,ゴルフ場などの給湯機器としての需要が拡大している。そして再生可能エネルギーと従来型エネルギー網との系統連携,再生可能エネルギーを貯蔵する蓄電池,水素に変換して再生可能エネルギーを貯蔵する取り組み等が各地で広がるのは間違いない。
●バイオマス資源利用の拡大
 新たなエネルギー資源の確保や有機系廃棄物の資源再生の観点から,世界的にもバイオマス資源の需要は増大している。日本においてもバイオマスは全国に広く分布している。すでに利用が進んでいる木質バイオマス(製材残林,伐採・剪定木くずなど)の熱利用や発電利用が各地で行われている。また,下水汚泥,食品残さ,家畜糞尿などのメタン発酵によるメタンガス利用も事業化されている。
 海外では植物由来のバイオエタノールの生産量がじわりと増えている。日本でも独自に,木質系セルロースなどを原料としたバイオエタノール生産が実証段階ながら始まっている。今後は作付面積や収穫量が限定される資源作物以外の間伐材,草葉などのセルロースからエタノールを製造する事業が拡大してゆくだろう。それに伴い,バイオエタノール製造に係わるプラント,装置・機器開発が地域で進む。またバイオマスのマテリアル資源利用としてのバイオプラスチックはすでに電機・精密機器の部材の一部として実証的に採用され始めている。これらバイオエタノール,バイオプラスチックなどの原料の供給源は第一次産業であり,それが産業構造転換の契機になるだろう。
 そうしたバイオマス資源利用で、にわかに注目されているのが、間伐材や山に放置されている未利用材の燃料利用だ。日本の国土の約70%を占めるから森林からの木材を従来の建築材の用途に加え、純国産の再生可能なエネルギーとしての利用量アップが本格化するだろう。
日本の森林蓄積量は戦後の人口林等の増殖によって現在、約60億立方㍍で1976年の2倍に達したと言われ、しかも年間約1億8000立法㍍と増え続けている。森林の適正管理には常に成長率の70%前後の間伐が必要だが、国内の木材生産量は2000万立方㍍と言うから、間伐必要量の20%未満が現状だ。一方、ヨーロッパの森林利用の先進国では日本の約3倍の木材生産量に達している。その理由のひとつとして木材の積極的な燃料利用が挙げられる。中でもドイツでの木材利用の再生可能なエネルギー利用比率は27%と至って高いのだ。
こうしたバイオ燃料利用のトレンドを踏まえて、日本の各地の林業にもその余波がじわりと押し寄せてきている。

●グリーンな次世代エネルギーとして注目される水素
 有限な資源に代わり,水素が次世代のエネルギーとして注目されている理由は,その特性にある。地球上で最も軽く無色無臭の物質である水素は,水や有機化合物に含まれて無尽蔵に存在する。酸素と混ぜて燃焼させても,排出されるのは水のみと,CO2を出さないクリーンエネルギーだ。燃料電池は,水の電気分解の原理を逆に利用し,水素と酸素を反応させて電気を取り出す”発電機”だ。反応の際に発生する熱を給湯などに利用すれば,コージェネレーション(熱電併給)としてシステム化が可能になる。電気と熱を利用する燃料電池システムの総合エネルギー効率は80%程度に達し,年間で39%のCO2が削減できるといわれる。現在燃料電池は一般家庭用として2009年から定置型の「エネファーム」の名称で,量産化がスタートしている。定置型以外にも,燃料電池は携帯電話やノートパソコンなど小型電子機器向けに実用化されている。エコカーの最終形ともいわれる燃料電池自動車はいよいよ量産体勢に入りつつある。現在は都市ガスや石油から水素を回収しているが,将来的にバイオエタノールからの水素回収,水の電気分解による水素供給が実用化されれば,真の意味での水素文明社会が実現することになる。
●排熱・未利用エネルギーとその高効率利用
 排熱で一番多い熱量は事業所や家庭などから排出される下水道に含まれるもので,年間47兆5000億キロカロリー。一般家庭200万戸の冷暖房エネルギー量に匹敵するという。その他,地熱・温泉熱など未利用エネルギー資源量は3300万Kw(世界3位)。原発3基分の出力が可能。すでに排熱・未利用エネルギーを利用可能な温度に変換するヒートポンプや,排熱を利用して発電する熱電変換が実用化されている。その他,電車等の電力回生技術,パワー半導体などの技術革新が進む。
●使用済み製品を含む廃棄物の有効利用
 従来の資源浪費型のScrap&Buildではなく,使用済み製品を含む廃棄物を再利用を目的としたRe-Build(再生)。Reの発想が求められている。Reduce(減量化),Recycle(リサイクル),Reuse(リユース)等の他、故障した製品などのRepair(修理・修繕),旧式な機器・製品のReprofit(機能アップ)等の事業が年々裾野を広げている。Recycleで最近,市場を拡大しているのはマテリアルリサイクルが困難な廃棄物を固形燃料化してエネルギーとして回収するサーマルリサイクルである。
 その他,家庭に埋もれている不要品などを資源として流通させるReuse-shop(中古市場),古い建築・建造物の長寿命化を図るRenewal
(改修),既存の建築物を転用するためのReconstruction(改築),室内の装いを新たにするReform(改装)等,資源循環型社会においても
Reビジネスの市場拡大は必至だ。
 ちなみに環境省の市場規模予測では,2010年に機器・家具などの修理が3兆1000億円,住宅リフォーム・改修が8兆9000億円,2020年には,前者が同水準,後者が10兆4000億円規模に拡大としている。EU 諸国では,建築物の改修・補修の着工率は新築のそれを上回り,6対4の比率となっている。

<その他の資源確保としてのビジネスチャンス>
●水資源の確保
 国連の報告書によると,飲料水などの安全な水を得られない人は11億人。中東や中国などアジアの一部では特に深刻で,必要量の40%余も不足する。2025年には24億人が水不足に陥るとの予測もある。家庭や工場の排水設備が未整備のため,河川や湖沼,地下水の汚染が進んでいる事も大きな問題だ。新興国では90%の排水が未処理のまま河川などに垂れ流されているという。2025年には水ビジネスの世界市場規模は約100兆円にもなるといわれる。逆浸透膜など高い水処理技術を持つ日本企業にとっては,中長期的なビッグビジネスのチャンスだ。
●食料資源確保
 食料資源については現在,食料自給率が40%の日本にとって重要なテーマになるだろう。食料自給率では,先進国の中で日本が最も低く,米仏加豪は100%を超える。日本場合,米穀(自給率100%)以外の農作物の自給率向上が課題だ。最近では大手企業をはじめ,地域の建設・土木会社などが農業生産法人を設立し,休耕地利用の大規模農業化による効率化,経済効率の良い農業形態への取り組みが始まっている。既存農家の一部は,食の安全・安心に重点を置いた有機農作物栽培や高度な食品加工による付加価値の高い食品生産へと走り始めた。
●海洋資源の開発
 海洋資源は「水産」「海上」「海底」の資源がある。四囲を海に囲まれた日本はこの分野で極めて有利なポジションにあり,将来は世界有数の海洋資源国になる可能性を秘める。国土面積は約38万平方キロメートルで世界61番目だが,海洋面積は約447平方キロメートルで世界6番目。しかも海域には豊かな漁業資源,海洋エネルギー資源,にわかに脚光を浴びるメタンハイドレード、レアメテルなどの海底資源が眠る。この海洋資源の開発の早晩,本格的な取り組みが始まるだろう。