2016年9月16日金曜日

欧米の建設市場は新築から改修・リフォーム市場へ

欧米の建設市場は新築から改装・改修、及びリフォーム市場へ

 国内には改装・改修が必要な老朽化した集合住宅が約250万棟(一般戸建住宅を入れると500万棟以上)は越えると言われる。これらに手を加え長寿命化を図って行くか、壊して建て直すか。国立競技場や築地市場(ここは土壌汚染問題含む)のように建て替え新築となると廃棄物処理、新しい資源投入など環境面で大きな問題を抱える。建設廃棄物は全産業廃棄物排出量の約20%を占め、最終処分場の埋め立て量は約40%に及ぶ。現在、この膨大な建設ストックをどうするかと言う真剣な議論が始まっている。同時にこの分野に「大きな事業チャンスあり」として浮上してきたのが改装・改修事業だ。新築における廃棄物の削減・有効利用、新たな資源投入などの環境負荷等を考えると、集合住宅等の建築物の長寿命化(ストックメンテナンス)の方がはるかにスマートだと言うことだ。既存の建築物の耐震を含む改装・改修の他、コンバージョン(用途転用)の事業がクローズアップされている。それに伴う各部屋のリフォームも商機が急増している。


●改装・改修工事とは
一般的に呼ぶ改装・改修工事とは、建築基準法では「大規模の修繕工事」「大規模の模様替え」という。まず「大規模の修繕工事」だが、建築物の主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根または階段)の1つ以上について、ほぼ同じ材料を用いて、同じ形状・同じ寸法でつくり替え、性能や品質を回復させる工事のこと。一方、建築物の主要構造部のひとつ以上について、異なる仕様でつくり替え、性能や品質を回復させる工事を「大規模の模様替え」と言う。
改装・改修が必要な老朽化した建築物が抱える健康、環境への影響はことのほか大きい。建材、塗料に含まれるホルムアルデヒド(シックハウス症候群の原因物質のひとつ)やアスベスト(肺がん、悪性中皮腫等を引き起こす物質)等による著しい健康被害、都市部でのコンクリート建築・建造物の増大によるヒートアイランド、建築物を利用する際のエネルギーの浪費等さまざまな問題が顕在している。
改装・改修は建築物の構造維持、機能更新はもちろん、こうした健康、環境の負荷を改善しつつ、さらにそこに住むひとの快適な暮らしを提供することで、建築物にさまざまな機能を付加して資産価値を高める役割も果たす。
今後、高度経済成長期、及びそれ以降に建てられた老朽化した集合住宅の他、大型施設(公共施設、ホテル、旅館等)の改装・改修需要が年追う毎に伸びている。大手ゼネコンを始め、新分野進出の事業開発に熱心な地域の地場コンはこの分野での受注に動き出している。

●改装・改修事業に伴い各室のリフォームも急増中。
改装・改修事業の増大と同様に各室のリフォーム需要も拡大している。
新築時と同じ付帯工事が伴い、地域のリフォーム専門業者、ハウスメーカー、工務店、設備業者、便利屋等が本格参入してきている。また地域の日曜大工の材料提供ショップも忙しくなり始めたという話も。
さらに建物管理会社も改装・改修事業に乗り出している。建築・建造物の規模、あるいは行政の都市再生プロジェクトで再開発の対象となるような大型高層ビルから集合住宅、一般戸建住宅まで幅広い。
ちなみに欧米の先進国の建設市場は新築より改装・改修、そして各室のリフォーム市場が主流だ。国立競技場、日本青年館等アジアで最初のオリンピックであり、高度経済成長期を経て先進国の仲間入りしたシンボリックで文化的遺産として残すべきだった建築・建造物をいとも簡単に破壊して建て直すと言うスクラップ&ビルドの発想を問い直す時期にきているのだ。