2017年9月21日木曜日

都市鉱山は希少金属の宝庫

都市鉱山は希少金属の宝庫

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催にあたり、日本の大会組織委員会は「都市鉱山」から採取した金・銀等の希少金属をリサイクルして、金、銀、銅の各メダルに再利用いう試みを4月から始めるも遅々として進んでいない。こうした希少金属の再資源化は今に始まったことではない。13年に使用済み電子機器等を対象にした「小型家電リサイクル法」が施行されるも、各使用済み製品の各回収義務のないため回収率は15年度で10%足らず。メダル再利用をキッカケに都市鉱山100%再資源という現況とは。。

●都市鉱山とは
都市鉱山とは、スマートフォン、ガラ携、ゲーム機等のIT製品や小型家電製品にレアメタル(希少金属)や貴金属等が含まれている。それら使用済み製品を「採掘可能」な資源と考えて、都市に埋蔵されるひとつ鉱山とする概念。都市部から排出された不用な電気・電子機器をリサイクルして、そこから貴金属やレアメタルを取り出し再利用するものだが、1980年に南條道夫(当時東北大学選鉱製錬研究所教授)らによって提唱された。株価の低迷での「金本位」、東京オリンピック・パラリンピックのメダルへの再利用等の機運もあり、金等の貴金属の価格が上昇するに伴い、再び注目されている。
物質・材料研究機構の試算では、日本の都市鉱山には金が1800㌧と世界の埋蔵量の16%、銀が60000万㌧で約22%が眠っている。金銀ともに埋蔵量は世界一。ちなみに銅は3800㌧で第2位だ。それぞれが世界の需要に対して約3年分は充分に供給できる量に達する。その他リチウム7年、白金5年、レアアース2年分は優に供給可能だ。
この都市鉱山の埋蔵量からみると、日本は世界有数の隠れた「資源国」なのだ。しかし未利用のまま放置状態が続く。
資源小国・日本として、排出量は世界トップクラスの食品ロスと同様に、今一度考え直す命題のひとつだ。

●海外での資源獲得よりも再資源化の道を
スマ-フォンやゲーム機等に含有される金は0・03%。一方、自然界の鉱石1㌧からの採取量は3~5%だと言われている。その割合は0・0003%程度。枯渇性の高い他の金属も鉱石からの採取量も次第に減ってきている。取り過ぎて含有量の多い鉱石が減少しているからだ。
そんな現状を踏まえれば、採取量が確実な都市鉱山の有効利用へ目が向く。しかも都市鉱山なら、大規模な採掘での自然破壊、採取時の有害物質による環境への悪影響、地域住民の公害・健康被害の抑制に繋がる。しかし産業界や学者の一部から紋切型の声を聞く。「コスト面では天然鉱石には勝てない」と。
実際のところ、金銀その他のレアメタル回収のリサイクルコストを下げる技術は日進月歩で進んいる。
環境ビジネスでは、「リサイクルは廃棄物を材料とした製造業」と視点からみると、都市鉱山からの金属回収を業とする成功事例も少なくない。横浜金属を先達として、今は田中貴金属も本格参入して裾野を広げている。

●各メダル全部の供給は空疎
2020年東京オリンピック・パラリンピック大会組織委は4月に「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」を東京都始め、全国の自治体を窓口にスマートフォン、ガラ携、ゲーム機、パソコン等電子小型家電の回収を始めた。リサイクルした金、銀、銅でメダル5000個すべてを作るのが目標だ。掛け声だけの取り組みに終わるのでは、と言う危惧がある。2001年家電リサイクル法施行、現在、家電リサイクル率52%。2013年小型家電リサイクル法施行、現在、同リサイクル率10%以下と言うのが実情。
国としてはオリンピック・パリンピックの大イヴェントに相乗りして、進まないリサイクル率を一気に高めたいところだが、ここでも他人任せの「自主的な」回収システムにお任せなのだ。結果として都市鉱山の小型家電は資源として海外へ流出したり、自治体に引き渡される過程で業者に高い値段で流されたり、リサイクル費用後払い(リサイクル費用逃れ)ゆえの不法投棄されたりしている。要は、普通の経済ルールでモノが動いている。

●減容・減量化が課題
出たものをどうするか?と言う対処療法でなく、都市鉱山が誕生しないように最初からヴァージン資源を極力使わないルール作りが求められている。変わらない消費者の果てしない欲望をくすぐる新製品が市場を賑わす。資源小国であり、しかも将来世代の持続可能な社会の実現を考えるならば、将来世代が享受すべき資源の先取り、資源浪費は回避の発想が必要ではないのか。