2018年6月12日火曜日

環境配慮型企業への投信が拡大


環境に配慮した経営を推進する等社会貢献型企業を対象とした「ESG」投資と言われる投資信託が投資商品を増やしながら、個人投資家の投資意欲を掻き立てている。従来、欧
米の機関投資家を中心に広がってきたものだが、日本ではこれまで投資に無頓着だった個人を対象としたESD関連の投資信託が売れている。個人投資家が注目するその動向を追
ってみた。


●ESGとは
企業が持続的に成長できるか否かを判断する指標として用い
られる、Environment(環境) Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3要素の総称である。主に投資の目安として参考にする「environment」は環境への配慮・地球環境の問題に対する取り組みを指す。また「social」は社会的な課題の解決に向けた取り組み、そして「governance」は顧客・株主・従業員といったステークホルダーに対するCSR(企業の社会的責任)のあり方を指している。
ESGの諸要素は、それ自体利益に直結するものではないが、ESGに十分に配慮して事業活動を推進している企業は、長期的に持続的に成長・発展してゆくことが期待できると見
なしているため、ESGはリスクの少ない安定した投資先企業を見分ける指標となっている。
ESGは2000年代半ばに国連で提唱され、以後、欧米などを中心に広まりつつある。2012年には東京証券取引所も東証市場第一部銘柄を対称とするESGの調査を実施、いわゆる
「ESG投資」に適した優良企業を選定している。
 
 
●ESG投資とは
ESG投資が一般的に言葉が使われるようになった背景には、2010年頃からESG投資に対する機関投資家の理解が大きく変わってきたのが契機。ESG投資より前にSRI(社会的責任
投資)という言葉がよく使われていた時代には、SRIと言うと、何か通常の投資とは違う、強く社会や環境を意識した倫理的な投資手法だった。当時SRIには否定的な見方も多
く、社会や環境を意識した投資は財務リターンが低く、有効な投資手法ではないと見る向きが一般的だった。しかし昨今、社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターン
も高く、また投資リスクが小さいという実証研究が関係各社で進んだ。この新たな考え方は、企業経営においても「サステナビリティ」という概念が普及し、社会や環境を意
識した経営戦略は、企業利益や企業価値向上に繋がると言われるようになった動きと対を成しています。
ESG投資の流れを裏付ける大きな活動のひとつが国連責任投資原則(PRI)だ。この国連責任投資原則は、国連機関である国連環境計画(UNEP)と国連グローバル・コンパクト
UNGC)が推進している制度で、これまで年金基金などアセットオーナーや運用会社がESG投資の推進に自主的に署名し参加を表明している。すでに世界1,500機関以上のアセッ
トオーナーや運用会社などが署名しており、世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年9月に署名をした。現在ではESGは特殊な投資
手法ではなく、、一般的な投資手法(メインストリーム)へと変化している。
また日本政府もESG投資の促進を図るために、、2014年2月に金融庁が発表した「日本版スチュワードシップ・コード」、2015年6月に金融庁と東京証券取引所が発表した「コ
ーポレートガバナンス・コード」は、伴にESG投資商品だ。

●日本での現状
NPO法人・日本サスティナブル投資フォーラムの調べによると保険会社等の国内機関投資家による17年のESG投資総額は、136兆6000億円と、前年度比2・4倍に急増した。環境関
連では、個人投資家を対象とした、再生可能エネルギー、省エネルギー、資源リサイクル、水質浄化、効果的な農業生産等を包括した「日興エコファンド」「損保ジャパン・
グリーン・オープン」等が人気商品だと聞く。最近、環境関連では注目されているのが鎌倉市「鎌倉投信」で扱う投資信託「結い2101」だ。、集めた資金を人、共生、匠の観点
から選んだ投信である。地域に拠点を設けて雇用創出したり、安全な食品を提供したり、特定分野で卓越した技術力を誇る企業が対象だ。投信ができた2010年の運用額は4億円程
度だったのが、今年3月末には349億円に増大した。購入者は30~50代で「自分の投資に社会的な見出す新たな投資家層が出てきた」と鎌倉投信では分析している。
ちなみにESG投資を行う投資信託が常に良い成績を得られるとは限らないが、社会貢献型と思われる事業に投資したい個人投資家が増えつつあるのは間違いなさそうだ。