2018年10月20日土曜日

新たな経済指標が求められている

新たな経済指標が求められている

 経済成長を測る尺度としてGDP(国民総生産)が常識・横行する一方で、地域の自然環境等を組み入れた「自然資本」を反映させた新たな経済尺度が注目されている。将来世代及び途上国の人々の豊かな持続可能な社会の実現を視野に入れた新たな指標創出「環境経済」が求められている。一部大手の通信関連企業が各地の所有する森林や農地、水産資源等の自然環境の資本価値を「見える化」しようとする試みも始めている。

 ●自然価値の算出
 自然資本とは、水や大気、土壌、動植物等が形成する資本のこと。経済学でいう土地,労働と並ぶ重要な生産要素である資本の概念を広く自然物にも敷衍したもの。すでに政府統計等の公開データを基に、全国各地の約1740の自治体の自然や住民、人為的な構造物に関する資本価値に加えて、各自治体の持つ特性を環境・社会・経済の指標からも評価する新機能サービス「エヴァシーヴァ」として公開している。これまでの「エヴァシーヴァ」では、森林や農地がそこの住民に与える1年間の価値を算出する機能を提供してきた。例えば森林による表層崩壊・雪崩防止の効果や二酸化炭素(CO2)吸収効果、農地からもたらされる農作物、気候変動の影響等10通りの指標による定量的な評価を可能にしている。

 ●新たな経済指標として
 新機能では、一例を挙げると森林面積や木材の出荷量と取引価格等の市場見通しから、各自治体が所有する森林が将来算出する資源価値の合計を地域資本として見える化。自治体は森林資本の増減量を測りながら、持続可能な森林資源を確保できる対策を立てられる。資源小国の日本にとって資源の多くを輸入するが、輸入に頼らず国土の森林面積が世界3位の森林資源の利用は重要な課題なのだ。それはともかく森林の他、農地や水産資源等が将来にわたってわたしらに与えてくれる「自然資本」も定量化が可能だ。量の減少や質の劣化、物理的に金銭にならない見えない知恵や文化の算出も可能だ。

 ●今回の新機能はについては完成までには程遠い。逆に未完成だからこそ独自判断次第で自社の将来の得べかりし事業創出につながるのでは。こうした新たな試みは過去何度も繰り返し提案されてきたが、成功事例として結実した事例は残念ながらナシ。しかし自然資本の定量化は避けられない時代に入ってきている。枯渇性の高い資源の的確な把握、資源小国の日本にとって新たな資源開発は大きな商機である。ましてや環境ビジネス市場は第3次産業が中心になろうとしている。このいくつかのキーワードの中から浮上する新ビジネスはいくつも想定される。

 ●グリーンGDP的な発想を
 以前に本稿でグリーンGDPについて触れた。この発想こそが来るべき時代に求められている。この延長線上に新たな事業チャンスを発掘できるのだ。未利用資源は数えれば枚挙に暇がない程である。