2018年11月15日木曜日

ハンター・ロビンス著「自然資本主義(Natural Capitalism) 環境ビジネスここがポイント 2002年11月

次世代の持続可能な社会を確保するためにさまざまな分野での取り組みが開始されている。1993年に環境基本法が公布されて以来、この国の環境・廃棄物・リサイクル管れの法整備も着々と進んでいる。その法整備の流れを高所から俯瞰すると、おおよそ次の3つの取り組みが見えてくる。その1つが限りある資源の有効利用と廃棄物の適切な再利用を図る資源循環。2つ目が従来型のエネルギーに代わる再生可能な、分散型の新エネルギー開発と省エネルギーの取り組み。3つ目が現存する自然生態系の維持・ 保全と劣化してしまった自然・生態系の修復・復元である。こうしたさまざまな環境負荷の改善の取り組みの局面で多様な新たなビジネスが創出されようとしている。 環境の21世紀を間近に控え、新たなビジネスの発想に役立つ1冊の本がいま、アメリカで話題を呼んでいる。エネルギーソフトパス論で知られるハンター・ロビンス著「自然資本主義(Natural Capitalism)がそれだ。同氏は自然界つまり生態系(Ecosystem)の循環に注目。例えば蜘蛛(くも)はコオロギやハエなどを食べて絹に変換、あわびは海水を取り込みセラミックの2倍の強度を持つ貝殻に転換、さらに樹木は光、空気、水、土をセルロースに変換するなどの事例を紹介している。同氏はこうした動植物は廃棄物を一切ださない「モノづくりの熟練者」と呼ぶ。さらにこうした生態系に準拠した優しい化学プロセスが既存産業の持つ残忍で非効率な生産プロセスにとって代わる魅力的な方法だと主張する。つまり廃棄物の削減にとどまらず資源、エネルギー、生態系をかくほするための発想およびビジネスチャンスの無限の可能性をそこに求めている。他にフロンの代替物質にオレンジの皮の利用、さらにビジネスモデルの転換への発想について多くの事例を挙げる。環境ビジネスは自然界の営為の中に案外ヒントがあると言えそうだ。