2019年2月21日木曜日

おがくず発電システム 1998.10.15

杉の産地である三重県美杉村の製材所、 信栄木材の一角で、おがくずを使ったバイオマス発電システムが稼働している。バイオマスとは生物由来の再利用可能な資源のこと。
米国やブラジルを中心にサトウキビやトウモロコシなどの糖質およびデンプン質から燃料用エタノールを生産することは古くから行なわれているが、日本ではあまり利用されてこなかった。開発したのは同製材所の経営者鈴木信男さん。 杉の製材で大量に発生するおがくずは製材業者にとって悩みの種。肥料として山などに撤くこともあったが運送費がかかるため、 燃やすか放置しているのが普通だ。そのおがくずの有効利用にと鈴木さんがおがくず発量システムの開発に取り組み姶めたのは10年ほど前。 戦後すぐの頃、処分に困っていたおがくずを木炭自動車の燃科に使う実験を行なったのを思い出したのがきっかけだった。 それを発電に応用し、ほとんど独学でシステムを完成させたのが5年ほど前のこと。

おがくずはべルトコンベアで発電施設に送られ、ミキサーで混ぜ合わせながら水分量を均一化し、 反応炉に供給する。反応炉では空気量を調節しながら最高1500度Cの高温でおがくずを蒸し焼きにする。 熱分解されたおがくずは水素、一酸化炭素、タール分の混ざったガス状態になり、 船舶用のを改良したディーゼルエンジンの燃料として使われる。 エンジンは発電モーターと直結しており、出力100キロワットの電気が生み出され、製材所や事務所で自家消費している。 エンジンからは燃科を燃焼した際に、 CO2と水蒸気の高温排ガス(約600度c) が発生するが、 これも温水を作るために利用。 貯水タンクに 細管を張り巡らせ、その中に髙温ガスを送り温水にするのである。
温水は木材の乾燥室の熱源として使っており、同社の運営に必要なエネルギーのほとんどがおがくずだけで賄われている計算だ。いまのところバッテリーがないので運転は昼間のみで夜間は炉の火を落としている。毎朝、 炉内温度が 1500度Cに上がるまでにはおがくずを余計に消費しなけれぱならず、それが問題だ。

おがくず発電システムの技術のうち5件が特許申請されているが、 重要な部分は特許出願していない。 技術が他に漏れるのをおそれてのことだ。設計図も一切なく、 肝心な技術はすベて鈴木さんの頭の中というわけだ。孤高の発明家の目下の夢は発電した電力を地域のー般家庭にも供給することだ。

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