森が語る近代――屋久島の記憶と環境の変遷(明治-昭和)
明治以降の屋久島では、屋久杉の大規模伐採が始まり、島の景観と生態系が急速に変化した。木材は薩摩藩の財政再建や近代産業の燃料として搬出され、森は経済の中心に置かれた。だが島民にとって森は単なる資源ではなく、祖霊が宿る生活の根でもあった。伐採によって失われた木々を前に、彼らは「森が我らを育てた」と語り、森を人格的存在として捉え続けた。戦後の高度経済成長期には、電源開発や林道開削が進み、島の山肌は裸になったが、一方で「守る森」「祈る森」という意識が芽生え、環境運動の源流が形成された。信仰と産業の狭間で揺れながらも、島人は森との関係を断ち切らなかった。現在、屋久杉は世界遺産として保護されているが、その背後には、伐ることと祈ることを同時に生きた人々の記憶が息づい
ている。
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