Wednesday, November 4, 2026

坑夫 1916年 地底に沈む声

1916年、宮嶋資夫は、鉱山労働者の生活を正面から描いた小説、坑夫を世に送り出した。舞台となるのは、暗い坑道と過酷な労働に支配された鉱山社会である。宮嶋自身も茨城県のタングステン鉱山で事務員として働いた経験を持ち、その体験が作品の土台となった。主人公の石井金次は、かつて鉱山の争議で勇敢に闘った人物だが、仲間の裏切りを経験し、放浪する坑夫となる。新たな鉱山でも、彼は仲間たちへの反発と孤独を深め、酒や喧嘩の荒々しい生活へ沈んでいく。しかし、その姿は単なる無頼の男として描かれるのではない。坑道の暗闇、労働の疲労、貧困、仲間同士の不信、経営側との緊張が、一人の人間を追い詰めていく過程として描かれる。坑夫は、労働者を理念の象徴としてではなく、怒りや弱さを抱えた生身の人間と� ��て描いた点で、大正期労働文学の重要な出発点となった。

No comments:

Post a Comment