Wednesday, June 4, 2025

共産党員と村の空気―昭和二十〜三十年代の政治不信と監視の構造

共産党員と村の空気―昭和二十〜三十年代の政治不信と監視の構造

昭和二十〜三十年代、戦後の混乱期から高度経済成長前夜にかけて、共産党に関わることは地方社会では危険視されていた。ある青年が共産党に共鳴し、演説やビラ配りを始めると、村人たちは「あいつは国に睨まれている」と噂し、距離を置いた。彼の語る「正義」や「平等」は、むしろ迷惑な火種と見なされ、警察沙汰への懸念が共同体に蔓延する。背景には、戦前の治安維持法、戦中の密告文化、戦後のレッドパージといった国家による監視と排除の記憶がある。政治に関わる者は「ヤクザ」と同視され、選挙も「村の有力者に従うべき」という談合的な仕組みに支配されていた。紙の上では民主主義が謳われていても、実際の地方では自由な言論や思想は封じられがちだった。青年はその矛盾のなかで孤立し、政治的信念を貫
くことは共同体の秩序に背く行為とされていったのである。

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