産業廃棄物の静脈物流は、物流業者にとって巨大なビジネスチャンスとなっており、成熟した産業へと発展しようとしています。その背景には循環型社会への時代の要請があります。「世界中で廃棄物を収集、輸送する静脈物流が大きなビジネスになる」というのはロジスティック・マネジメント研究所の阿保栄治所長の言葉です。
実際のところ、1994年にドイツで循環経済・廃棄物法が施行されると同時に、静脈物流に新規参入した廃棄物輸送業者は1500社を超えました。米国の静脈物流関連の研究成果から推測すると、リサイクルを含む廃棄物処理市場の約30%が回収・輸送コストで占められています。2000年初頭の日本における市場規模を約30兆円と見積もると、静脈物流市場はおおよそ10兆円規模という計算が成り立ちます。
一方、次のような予測も可能です。現在、日本のトラック運送事業の市場は12~13兆円と言われており、ほぼ100%が製品および商品供給のための動脈物流です。今後、あらゆる分野で静脈物流の整備が促進されると、販売された製品などが動脈から静脈へ逆流します。現在の動脈物流に匹敵する静脈物流の市場が誕生する可能性は大いにあります。
日本で静脈物流への参入に一部成功した日本通運は、静脈物流について以下の3つの事業分野に分けています。①残土輸送や流出重油の回収など地域環境保全のためのサービス、②水銀や廃油など特定品目を対象とした専門処理輸送、③使用済み製品のリサイクル物流です。現在、産業廃棄物の収集運搬は日本全土で9万社以上あると言われ、大半が個人事業者などの小規模経営です。日本通運は全国ネットワークを生かした独自の展開を進めているようです。
循環型社会への移行に伴い、静脈物流の果たす役割はますます大きくなります。将来、一般廃棄物の収集運搬も緩和されると、静脈物流市場はさらに裾野を広げるでしょう。循環型社会の基本は地方・地域完結と考えると、地域発の収集運搬への中小企業の新規参入の商機は多く残されています。こうした新たなウェーブに誰が乗るのでしょうか。
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