Wednesday, April 9, 2025

雪の静けさが冷房を支えるとき 2009年2月

雪の静けさが冷房を支えるとき 2009年2月

雪氷を活用した自然冷熱システムが注目されており、北海道や新潟県などの寒冷地を中心に導入が進んでいる。特に北海道では、経済産業局の報告によると、2003年度から年に3〜4件の導入ペースが続き、10年前の3倍以上の件数に増加している。

当初は公共施設や農産物の貯蔵用途での導入が主であったが、2006年にはトヨタ自動車北海道(苫小牧市)、2009年にはデンソーエレクトロニクス(千歳市)など、民間企業が冷房用として採用する事例も現れた。これらの企業は工場施設に雪を蓄積し、夏場の冷房やIT機器の冷却などに活用している。

特に注目すべきは、NTTコミュニケーションズや富士通、リコー、室蘭工業大学などが参加する、北海道グリーンエナジーDC研究会によるホワイトデータセンター構想である。外気冷房、フリークーリング、そして雪冷熱エネルギーを組み合わせた冷却システムにより、空調消費電力の最大9割削減を目指している。

民間による導入の具体例としては、新千歳空港(北海道千歳市)で洞爺湖サミットを契機に構築された雪冷熱冷房施設がある。除雪した雪を2トンずつコンテナに保存し、融解水を使って夏場のターミナルビルを冷房する。試算では5台中3台のクーラーがこの雪冷熱で稼働し、空調の電力消費を約70〜90%削減できる見込みだ。

また、新潟県小千谷市では個人住宅を対象とした雪冷房実験をもとに、「雪冷熱エネルギー住宅建築のためのガイドライン(仮題)」が策定されている。これにより、一般住宅への導入促進とともに、地域の工務店や新規参入者へのビジネスチャンスも広がろうとしている。

このような雪氷熱利用の広がりは、地球温暖化対策の一環として高く評価されている。2009年度から経済産業省が導入を目指す、グリーン熱証書制度においても、雪氷冷熱が対象エネルギーとして検討されている。導入支援施策の拡充により、今後さらに普及が期待される。

地球温暖化の進行がもたらす電力需要の増加に対して、自然エネルギーである雪氷を活用する取り組みは、地域の気候特性を生かした、持続可能な冷房技術として今後も注目されるだろう。

関連情報

・環境省「再生可能エネルギー熱利用技術概要」
・TDKによる雪冷房システムの紹介
・J-STAGE「北海道における雪氷冷熱利用に関する報文」
・新千歳空港の雪冷熱供給システム事例資料
・農研機構「農産物貯蔵における雪氷冷熱利用の意義と課題」
・国土交通省「官庁施設向け雪冷房システム計画指針」
・ENY「再生可能エネルギー解説資料」
・白馬村の新エネルギー導入プロジェクト資料
・ニセコ町「新エネルギー導入基本方針」
・国土交通省「雪冷熱エネルギーの活用促進に関する資料」

No comments:

Post a Comment