廃プラスチックが原料油へ戻る時代 サーマルリサイクル技術が登場した社会的背景(1990年代)
1990年代の日本では、廃棄物処理と資源循環が同時に深刻化し、特に廃プラスチックは焼却すればダイオキシン、埋めれば分解されないという難題として浮上していた。消費拡大により各地の最終処分場は逼迫し、燃やす・埋める方式が限界に達していた。この状況の中で注目されたのが、熱分解によってプラスチックを原料油へ戻すサーマルリサイクル技術である。三百度から五百度の無酸素状態で加熱すると分子鎖が切断され、ガソリンや灯油に近い油分に変化し、一キログラムの廃プラから約一リットルの油が生成されるとされた。
九〇年代半ばには自治体向け小型装置や企業向け中規模プラントが実証段階に入り、環境誌や行政資料で取り上げられた。容器包装リサイクル法施行を控え、国や自治体が循環モデルを模索していた時期でもあり、油化技術は資源循環と処分場延命の両面で期待された。一方で熱分解装置は運転の安定性が難しく、生成油の品質ばらつき、塩ビ混入による腐食やガス発生、維持管理コストなど課題も多かった。それでも当時のごみ処理危機を考えると、油化技術は重要な選択肢として位置付けられ、後の化学的リサイクル研究の基盤となった。
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