Thursday, October 8, 2020

循環型社会での公共事業の考え方 2000.08.15 - 2020.10.08

戦後、連綿として行われてきた公共事業の考え方が大きく変わろうとしている。戦後の焦土日本を復興させ、高度経済成長に乗せるため、各種インフラ整備の公共事業は必要不可欠であった。将来においても、景気浮揚としての役割、あるいは各種インフラ整備の要の事業として公共事業の継続は図られるだろう。しかし、これからは公共事業そのものについての、あるいは対象となる事業について、改めて問い直す時期を迎えている。従来の公共事業は治山・治水、道路整備、湾岸・漁港、空港整備、住宅対策、下水道・環境整備、農業基盤整備など国の社会資本整備に振り分けられてきたが、これらの公共事業は概ね自然環境を破壊する急先鋒の役割も果たした。21世紀においての循環型社会ではそうした自然環境の悪化を招く従来型発想の公共事業のパイは減少の一途をたどる。

公共事業バラマキ批判の標的となっていた徳島・吉野川河口堰や島根・中海干拓事業が見送りになった。将来こうした長期にわたる事業を対象に再評価を行い、事業の中止も含めた見直しを行う「再評価システム」が他の土木公共事業にも導入されるだろう。そこで、刮目すべきはその評価システムの評価基準のひとつとして環境配慮が付加されつつあることだ。海外に例を求めなくても、愛知では万博の開催地の環境保全をめぐって、さまざまな視点から検討が重ねられている。公共事業とは文字どおり将来にわたる公共財の整備を行う事業だが、これから問われるのは新しい発想の公共財(環境財)の考え方に沿った事業内容である。

自然環境の保全は循環型社会の構築の重要なプラットフォームだ。スクラップ&ビルドからリビルドへの発想の転換、河川法の一部改正、環境アセスメント法の施行、各自治体の自然環境保全に関する条例の一部改正などを見てみると、従来の公共事業はもはや通用しない。次世代にわたる社会資本整備の根幹は自然環境の保全である。

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