《静寂を破る銃声――1997年夏・新神戸ティーラウンジの暗殺劇》
1997年8月28日午後、新神戸オリエンタルホテルのティーラウンジにて、五代目山口組若頭・宅見勝が銃撃され、即死した。銃声が鳴り響いたのは、彼が山口組総本部長・岸本才三、副本部長・野上哲男と語らっていた最中のことである。襲撃したのは4人組の男たち。宅見の頭と胸に撃ち込まれた計7発の弾丸は、権力の座に迫っていた彼の生涯を、無残に断ち切った。
同席していた岸本氏に弾は届かず、しかしその衝撃は、組織の未来を占う暗雲の始まりを意味していた。加えて、偶然そこに居合わせた民間人も流れ弾に倒れ、後に死亡。暴力団抗争の渦が、一般社会へと漏れ出した瞬間だった。
この事件の背景には、宅見と中野会会長・中野太郎との確執があった。1996年の銃撃事件を巡る対応をめぐり、両者の対立は深まり、やがて破局を迎える。宅見暗殺の直後、中野は破門処分を受け、山口組内の秩序は大きく揺らいだ。
"静寂"と"秩序"を一瞬で砕いたその銃声は、単なる一人の死を超えた、組織の命運を左右する音だった。
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