電力の迷宮――ビットコイン採掘が灯す未来の影(2023年〜現在)
ビットコインのマイニングにおける消費電力は、世界的に注目される環境問題のひとつだ。マイニングとは、新しい記録を作るために、大量の計算処理を行う仕組みである。この作業に勝ち残るためには、専用の機械を長時間動かし続けなければならず、それによって莫大な電力が消費される。
ケンブリッジ大学の調査によれば、2023年末の時点で、ビットコイン全体によって使われる電力の量は、年間およそ100から140テラワット時に達するとされている。これはアルゼンチンやオランダといった中規模国家の年間電力使用量に匹敵する数字である。
こうした巨大な消費電力が問題視されるのは、主にその電源が環境に優しくないものである場合が多いためだ。特に電気代の安い中国の一部地域やカザフスタンなどでは、依然として石炭火力が主流であり、温室効果ガスの排出量が大きくなる傾向にある。一方で、アイスランド、カナダ、スウェーデンなど、水力や地熱といった再生可能エネルギーが豊富な地域では、より環境に配慮したマイニングが進められている。
また、1回のビットコイン送金に必要な電力も注目を集めている。ある調査によると、その消費電力量は家庭の1か月分の使用量に匹敵するとされており、中央管理型のクレジットカード会社の取引に比べて、極めて非効率であるという指摘がある。
そして、今後の電力消費はどうなるのか。多くの専門家は、当面は増加傾向が続くと見ている。理由は明快だ。ビットコインの採掘に必要な計算の難度が年々高まっており、それに対応するためには、より多くの機械を稼働させ、より多くの電力を使わざるを得ないからだ。
もっとも、希望がないわけではない。一部の国では環境への懸念から、マイニングに規制をかけたり、再生可能エネルギーの使用を奨励したりする動きが出ている。こうした取り組みが世界的に広がれば、全体の電力消費が抑制される可能性もある。
しかし、現時点では、ビットコインの仕組みそのものが変わる兆しは見えない。したがって、技術の進歩や政策の転換がなければ、マイニングによる電力消費は今後もしばらく、世界の環境に大きな影を落とし続けることになるだろう。
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