日本で年間に生産されるガラスびんは約180万トン。
そのうち60~70%はびんへの再生が容易な無色透明や茶色のびんである。
しかし、ガラスびん工場が関東地区に集中していることから、北海道や九州など遠隔地で回収したガラスびんの再生は、運送費がかさむためにコスト高となってしまう。
さらに、輸入ワインびんや栄養剤びんなど緑、黒色のびんは生産ロットが低いこともあっていまだ再資源化が進んでおらず、ほとんどが埋め立て処分されている。
株式会社トリムは、98年に日本で初めて、廃ガラスびんを利用した多孔質軽葦資材の製造法の開発、商品化に成功した。
沖縄発の環境ベンチャーとしても注目を集めている。
●廃棄物を資源として捉え、県内での新産業創出。
同社は、前身である商事会社として73年に創業し、自然食、健康機器の販売を開始した。
79年に現在の株式会社トリムに名称を変更し、速読教室など教育サービス事業も展開。
94年には株式会社トリムフーズを設立して、飲食店の経営をスタートさせた。
この飲食店経営がガラスびんリサイクル事業を手がけるきっかけとなった。
「そもそもは当社が経営する居酒屋から大盪の空きびんが出ている状況を見て、これをどうにか処理できないかと考えたことが事業の原点です。
そうこうしているうちに、97年から容器包装リサイクル法が施行されることが決まり、真剣にリサイクルを検討することになった」(城博社長)そうしたさなか、友人からガラスびんの破砕に関する特許を出願しているが使わないかとの話があり、自社処理はもちろんのこと、容器包装リサイクル法施行で同じ悩みを抱えることになるであろう地方自治体や企業に向けた、新たなビジネスチャンスへの期待も込めて、技術開発に取り組んだ。
離島県かつ観光立県である沖縄県内で排出される廃ガラスびんは、人口規模が等しい他地域の約2倍にあたるかもしれないという、地域活性化の視点があったことも見逃せない。
早速、友人から特許を買い取り、社内に研究体制を組むと同時に、国や県の支援制度の活用や技術提携などを進めることで事業化のスピードアップを図った。
まず、96年度に創造技術開発補助金を受けて、廃ガラスびんを6mm程度に破砕するカレット製造機を山口県の企業と共同開発した。
ただ、カレットのままでは、従来技術とそれほど違いはなく、素材としての付加価値は高くない。
そこで、97年には一時破砕したカレットを500ミクロン以下に粉末化し、これに、添加剤を加えて焼成・発泡、冷却することで多孔質軽量資材「スーパーソル」を製造する「ガラスびん再資源連続式機械装置」の開発に成功するに至った。
「プラント開発では、できれば地元企業と一緒に開発したいと思ったが、最終的には期限をきちっと守り、しかも課題への対応が早い本土企業と組むこととなった」と新城社長。
新城社長は16年間にわたり青年会議所活動などに携わり、日本青年会議所の役員も務めるなど県内外で活躍した。
その際のネットワークが、短期間でのプラント開発、スーパーソル商品化に成功した要因のひとつだ。
●生まれ故郷でモデルプラントも建設ガラスびん再資源連続式機械装置のポイントは、廃ガラスびんの粉末体と発泡剤をムラなく、全体を均一に混ぜ合わせる技術。
この技術で特許を出願している。
最大のウリは、ガラスびんを形状や色で分別することなく一括投入し、破砕→粉末化→焼成→発泡→冷却までを一貫工程でできることだ。
さらに生成されたスーパーソルは、軽石状の軽量発泡資材で、水はけが良いこと、比重0.3~1.2程度に調整可能で用途に応じて使い分けができる、熱や油・薬品などに強い、流動性があり施工性に優れているなどの特長がある。
リサイクル資材というだけでなく、従来にはない機能性の高い新素材であるところが強みだ。
軽量かつ多孔質なことから軟弱地盤での埋土、あるいは微生物が生息しやすい多孔質を活かした園芸資材、浄化槽の濾過材など活用範囲は広い。
プラント開発成功後の99年、まずは新城社長の出身地でもある具志頭村にモデルプラントとして「未利用資源リサイクル工場」を建設、スーパーソル製造事業を開始した。
このプラントは操業開始当初から県内外の注目を集め、国県市町村職員や議員、民間企業、さらには国外からも見学が殺到しこれまでに2000人以上が訪れ、今も引き合いが多いという。
新しいリサイクル技術という観点に加え、地域循環型のシステムであることが多くの見学者を呼び寄せている。
この工場では、那覇市など県内自治体と契約を結び、自治体が回収した廃ガラスびんを無分別で月に200トン程度受け入れ、年間に約8000立方メートルのスーパーソルを製造、販売している。
スーパーソルの市場価格は50リットル袋で1700円で、エコマークも取得している。
国土交通省や自治体、大手ゼネコンなどに納入しているほか、「園芸用かるいし スーパーソル」などとしてホームセンターなどでも販売している。
また、リサイクル事業と同時に、プラント販売も手がけており、すでに群馬、山口、兵庫、長崎、鳥取、長野など全国で7ヵ所の工場が稼働中で、2000年11月にはスーパーソル普及に向けて「スーパーソル協会」も設立した。
さらに、このプラントは、2000年度リサイクル推進功労者等表彰で通商産業大臣賞、第31回中堅・中小企業新機械開発賞で機械振興協会会長賞も受賞した。
そのほか同社では、ガラスびんリサイクル促進協議会とトヨシステムプラントと共同で、使用済みのガラスびんを粒状のガレットに加工する移動式設備「SUPER-EMMA」も開発、販売している。
4トン車に全設備を搭載したもので、廃ガラスびんの発生現場や保管施設などで処理が行なえる。
処理能力は、5ミリに加工する場合で、1時間に約500kg。
価格は、粒状化設備本体が約3200万円で、車体(四トン)込みで約4400万円。
自治体や処理業者などに約30台の導入実績があり、米国からの引き合いもあるという。
同社が成功している要因はいくつかあるがまず一番は、生成品の機能性が高く、用途の拡がりがあることだ。
新城社長は「このシステムはビジネスベースで成立する仕組み」と自負する。
リサイクルがビジネスベースで成立するには、回収量の確保や物流システムの構築に加えて、リサイクル品が既存品と競争できる特性を備えていることが必要だ。
その点でスーパーソルは、価格を抜きにしても、従来はなかった機能性を持った新素材という点で勝負している。
また、同社はベンチャー企業が生き残るためのファクターとして特許を重視している。
リサイクル関連装置で8件の特許を出願したほか、機械製造会社と共同で研究した成果は共同出願するが、販売権はトリムとした。
今後は国際展開も視野に入れ、国際出願も進めていく方針だ。
沖縄県だけでも、すべての廃ガラスびんをリサイクルするには、離島を含め県内にあと7基の施設が必要だという。
新城社長は「地域内の廃棄物を地域完結型でリサイクルするために、各自治体で装置を導入してほしい。
とくに沖縄県は火山起源の軽石原料がなく、県産品の資材として多くの用途が見込め、新たな産業創出にもつながるはずです」と期待をかけている。
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