テールに潜む黒い波―統計の盲点がもたらす金融崩壊〔2000年代・タレブ「反脆弱性」〕
リーマン・ショック以前、多くの金融機関や政策決定者たちは、「平均的な振る舞い」を信奉し、統計の端に潜む「極端な事象=テールリスク」を軽視していた。だが、現実に起きたのは、まさにその統計的に稀とされる破滅的事態だった。ナシーム・ニコラス・タレブが『反脆弱性』で述べるように、こうした"まさか"の事態は無視すべき例外ではなく、むしろシステムを根底から揺るがす主因たり得る。特にサブプライムローン問題は、平均的な回収率に基づいた信用モデルによってリスクが過小評価され、「安全な金融商品」として市場に拡散されていた。オバマ政権や当時の金融当局も、リスクの「きっかけ」と「構造的原因」を混同したまま対応に追われ、事態をさらに悪化させたと批判されている。タレブは、複雑系の
本質とは予測不能性と不均衡性にあり、人間が築く制度は、たとえ洗練されて見えても、しばしば「未知のリスクに対する脆弱性」を孕むことを説く。つまり、真に堅牢な社会とは、異常事態を例外と見なさず、それを前提として設計されるべきなのである。
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