Saturday, November 15, 2025

知覚と感覚のあいだに梯子をかける ベルクソン「物質と記憶」 一九世紀末思想の射程

知覚と感覚のあいだに梯子をかける ベルクソン「物質と記憶」 一九世紀末思想の射程
ベルクソンは記憶の本質に踏み込む前に外部に広がる知覚と身体内部に沈む感覚という二つの領域を慎重に区別しその配置関係を整えることから出発する。知覚は世界側に属し空間的広がりを持つイマージュであるが感覚は身体内部の応答として現れる強度の現象であり広がりを持たない。この二つを混同すると記憶を脳内に蓄えられた像として扱う循環論へ戻り意識と世界の関係が不透明になるためベルクソンは両者を厳密に整理する必要を強調する。しかし知覚と感覚が並列して存在するだけでは経験は成立しない。外の知覚と内の感覚がどのように結びつき意味を帯びるかには教育や訓練と呼ばれる広い意味の経験過程が関与する。光景を見て危険と感じるか懐かしいと感じるかは身体の感覚と過去の経験の重なり方によって決
まりその対応関係こそが記憶の働きである。記憶とは脳内の映写装置ではなく知覚と感覚を結ぶ関係の歴史として生じる。ベルクソンは記憶論に入る前段階として外界のイマージュと身体内部の反応のあいだにかけられた梯子の構造を丁寧に描きその上に記憶の理論を築く準備を進めたのである。

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