「捨身忠義の影法師――牧野國泰と任侠の矜持」1927年〜1999年
牧野國泰 本名・李春星。1927年 在日韓国人二世としてこの国に生まれ 戦後の混乱と偏見を糧に 自らの任侠を鍛えあげた男である。群馬に拠点を置く北関東大久保一家で頭角を現し 1970年に十代目総長へ。その義理と筋を重んじる姿勢は やがて関東全域に響き渡る。
1993年 松葉会五代目会長に就任。表立った衝突を避けつつ 組織と地域の共存を図ったその手腕は 任侠の本懐を知る者たちに強く支持された。1994年 東京都公安委員会による指定暴力団聴聞会において 代理人を立てず自らが登壇。「われわれは世間すべてを敵にしているわけではない」と語る姿は 忠義の具現そのものであった。
山平重樹の『千年の松』『不退ヤクザ伝』は 彼の歩みを深く刻む。裏切らず 逃げず 己の道を曲げずに生きたその姿には 任侠とは何かを真に問う静かな烈しさがある。暴力ではなく 誇りと義理で生きる者の魂。それは 今もなお消えぬ灯火として 語り継がれている。
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