Friday, April 18, 2025

闇の声を聴け――竹中労、部落差別と向き合った言葉(1969年)

闇の声を聴け――竹中労、部落差別と向き合った言葉(1969年)

1969年、竹中労は「どうしても部落問題を取り上げたい」と語った。この短い一文は、差別を黙殺する時代の空気に逆らう、強靱な意志の表れだった。高度経済成長の裏側で、被差別部落の出身者は社会から目を逸らされ続けていた。報道機関は沈黙し、差別は構造に組み込まれていた。

竹中は常にそうした「見えない存在」に寄り添ってきた。『ルポライター事始』では、路地裏の労働者や娼婦、在日や被差別者の声を拾い上げ、記録することでその命の重みを伝えた。『靖国論』では国家が戦死者を私物化する構造を暴き、『歌謡曲解体新書』では流行歌に刻まれた民衆の嘆きを読み解いた。

竹中にとって、部落問題とは社会運動の一環ではない。それは、生きづらさを抱える者の沈黙と痛みに対し、言葉を持って応答する倫理だった。彼は、黙して語られぬ存在に光をあて、「見るべきものを見よ、語られぬことを語れ」と静かに叫んだ。その叫びは今も、社会の暗がりに鳴り響いている。

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