Wednesday, April 9, 2025

雪に息づく冷たき知恵 二〇〇九年から二〇二〇年代

雪に息づく冷たき知恵 二〇〇九年から二〇二〇年代

雪はただの厄介者ではなかった。北海道や新潟などの寒冷地では、この白い贈り物を活かし、持続可能な冷房技術として雪氷冷熱システムが静かに広がってきた。二〇〇三年から十年の間に導入件数は三倍以上に増加し、公共施設や農業貯蔵にとどまらず、民間企業にも波及している。

苫小牧市や千歳市では、トヨタ自動車やデンソーが雪を夏の冷房に転用。新千歳空港では除雪した雪をコンテナに保存し、ターミナルの空調をまかなっている。その結果、電力使用は最大で九〇%削減されたという。

NTTや富士通などが構想するホワイトデータセンターは、雪と外気の冷気でサーバーを冷却し、エネルギー削減と自然共生の新しいモデルを提示している。

近年では札幌市の公園施設、美唄市の玄米貯蔵庫、円山動物園の展示館などでも雪冷熱が導入されており、環境負荷を抑える技術としてさらに注目を集めている。

静かに降り積もる雪の中に、人と地球を結ぶ知恵が宿っている。

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