田村泰次郎(1911-1983)――戦場の余熱、闇市の体温 1945年から1960年代
従軍体験を背負った田村は、敗戦で終わらなかった暴力の余熱を、上野や新宿の闇市に立つ女たちの身体に見た。『肉体の門』のパンパン像は享楽ではなく、生き延びるための最後の資本であり、国家総動員が個人の身体へ刻んだ傷の証しである。占領下の取締と黙認の揺れ、安酒と博打に沈む夜の挿話を通じ、戦場の言語が都市へ延長される過程を描いた。彼のエロスは道徳の裁きに与せず、被害と加害、自立と搾取が同居する現実を同じ高さで見据える。高度成長が舗装する光の下でも消えない湿り気を掘り起こし、性と暴力の交点で人間の尊厳を問う記録として、戦後日本の倫理の原点を示した。
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