Monday, November 10, 2025

沈黙の海に潜む毒 - 1997年10月

沈黙の海に潜む毒 - 1997年10月

日本近海で捕獲されたシャチやゴンドウクジラの体内から、高濃度のPCB(ポリ塩化ビフェニル)やDDT(有機塩素系農薬)が検出された。シャチの脂肪組織には400ppmを超えるPCBが蓄積されており、これは欧米の基準をはるかに上回る。海に生きる者たちの体内に蓄積されるこれらの化学物質は、ただ静かに、しかし確実に彼らの命を蝕んでいる。研究者によれば、繁殖能力の低下や免疫機能の抑制がすでに観察されており、個体群の存続が危ぶまれている。

PCBはかつて工業製品の絶縁油や塗料に使用されていたが、環境中で分解されにくく、今もなお不適切な廃棄が続いている。一方、DDTは1950年代から農業用殺虫剤として広く使われ、既に多くの国で禁止されたが、途上国では現在も使用されており、大気や海流に乗って日本沿岸にも影響を及ぼしている。クジラやシャチの体内には、食物連鎖を通じてこれらの毒が濃縮され、生まれながらにして高濃度の化学物質を抱える子どもたちが生まれているという。

環境庁と水産庁は、事態の深刻さを受けて大規模な調査を開始した。特定海域の汚染源を特定するとともに、PCB廃棄物の適正処理を進めるための法整備が求められている。また、国際的な監視体制の強化を目指し、欧米の研究機関との協力も進められている。しかし、汚染はすでに海の奥深くへと浸透し、かつて青く澄み渡っていたはずの海は、見えない毒に静かに蝕まれている。

情報源:
- 日本近海の鯨類におけるPCB・DDT汚染の調査報告(環境庁、水産庁)
- 『人工化学物質による鯨類の汚染と影響』 (ecotoxiwata.jp)
- 国際環境機関(UNEP)による海洋汚染モニタリングデータ

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