Saturday, November 1, 2025

宇宙へ還る笑い ― 一九七〇年代

宇宙へ還る笑い ― 一九七〇年代

山口昌男の「笑い講」は、一九七〇年代の思想界において、管理社会への批判と人間の自由の再発見をめざす象徴的な論考である。高度経済成長を経た日本では、合理性と効率が支配し、学生運動が終息して思想的活力が失われつつあった。山口はそうした閉塞の中で、笑いを「正と反を融解させる宇宙的運動」と定義し、人間が宇宙的秩序に再び調和する道を示した。

彼にとって笑いは、単なる娯楽ではなく、社会的秩序を一時的に転倒させる解放の行為であり、理性中心主義への批判でもあった。寒山拾得や禅僧の呵々大笑に象徴される東洋的な「対象を持たない笑い」は、あらゆる二項対立を超える生命のリズムの回復を意味する。政治の保守化と商業主義が進む時代にあって、山口の思想は、笑いを通して人間が宇宙と再び響き合う"生の哲学"を提示した。笑いは思想の光明として、沈黙の時代に希望をもたらしたのである。

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