2024年6月28日金曜日

自動車業界が一丸となって始めた廃自動車対策 1998.04(45)

 「自動車業界が一丸となって始めた廃自動車対策」

年間約500万台発生する廃自動車のリサイクル率は現在重量比で75%です。販売店や整備事業者などに集まった廃自動車は、解体業者によってエンジン、電装品、バッテリーなどの部品ごとに分解され、シュレッダー業者が車体部分から鉄、非鉄金属などを回収した後に、残ったシュレッダーダスト(年間120万トン)が最終処分場に埋め立てられます。


ところが、鉄屑が高価だった時期には1台当たり1万円程度で取り引きされていた廃自動車が、80年代後半の円高の影響で安い鉄が輸入されるようになると一気に下落しました。加えて一部のシュレッダーダストから鉛などの有害金属が溶出することが顕在化したことで、96年4月には処分方法が管理型に変わり、処理費が1.5〜3倍にも跳ね上がりました。


全国に約140カ所あるシュレッダー業者のほとんどは財務基盤の弱い中小企業であり、逆有償で引き取る業者も現れ、不適正処理や不法投棄の横行という深刻な事態を招いています。そのため通産省は97年5月に「使用済み自動車リサイクル・イニシアチブ」をまとめ、2015年に廃自動車のリサイクル率を95%以上にするという目標を設定しました。


これを受けて日本自動車工業会(自工会)でも98年1月に「自主行動計画」を策定し、自動車製造事業者が早急に取り組むべき事項について数値目標を挙げています。具体的には2002年以降に発売される新型車では、理論上は再利用できる部品・材料の割合を示すリサイクル可能率を90%以上に高めるとともに、部品に含まれる鉛の使用量(バッテリーを除く)を2000年に96年の2分の1、2005年に同3分の1にすることなどを目標としています。


また、既販売車と継続生産車についてもリサイクル率を2002年には85%以上、2015年には95%以上に高め、最終処分量を2002年に96年比5分の3、2015年には同5分の1にすることを業界の統一目標に据え、そのための技術開発および情報提供を行なっています。


自動車メーカー各社も相次いで自主行動計画を策定しています。全体的に自工会の行動計画を踏まえてリサイクル可能率90%以上の早期達成や鉛使用量の削減を目指した取り組みを中心に、今後発売される新型車について、リサイクルしやすい部品の調達や材料の統合化、解体容易な製品設計など、LCAに基づく車づくりを重視しています。


これを実行するためには部品業界や素材業界とも連携をとるなど今後の基盤作りが必要とされますが、問題はむしろ今後大量に廃棄されるであろう既販売車への対応です。補修時に交換された樹脂バンパーの回収・リサイクルについては規模の大小はあれど、すでに各社とも取り組んでいますが、その他の部品についても有効な分解技術の開発、シュレッダーダストの減容・無害化および再資源化に向けた最適処理システムの確立が求められています。


自工会では96年末に東海窯炉サービス(岐阜県山岡町)内に乾留ガス化実験装置を導入し、可燃成分を含むダストを乾留して燃料ガスを回収する実験を開始しています。97年3月には茨城県つくば市に分別・固化実証プラントを設置し、ダストをガラスや土砂、鉄、非鉄金属、合成樹脂などを分別した後に減容・RDF化して乾留ガス化に利用する実験を行っており、有効性やコストの面で実証できれば民間ベースで事業化していく計画です。


自動車メーカーにおけるシュレッダーダストへの取り組みのパイオニアはトヨタ自動車です。70年に設立された廃車処理専門会社の豊田メタル(名古屋市)は国内最大の処理能力を誇り、96年にはダスト溶融固化技術を実用化しました。さらに、豊田メタル半田工場内に建設した実証プラントで、ダストの徹底分別・リサイクルの研究を開始しました。


以上が、自動車業界が一丸となって始めた廃自動車対策の概要です。

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