近年の廃棄物処理と再資源化の動向:炭化技術の現状と展望
近年、ダイオキシン対策特別措置法や廃棄物処理法の改正により、廃棄物の焼却に対する規制が厳しくなっています。同時に、資源循環型社会の実現に向けた各種リサイクル法が法制化され、最終処分場の逼迫に伴い、廃棄物処理費用も高騰しています。これにより、廃棄物処理は焼却・埋立てから再資源化への転換が強く求められるようになりました。
その結果、従来は脱水・乾燥・焼却などの中間処理の後に埋立処分されていた有機性廃棄物(建設廃木材、食品廃棄物、下水汚泥、家畜糞尿など)についても、単純焼却に代わる再資源化手法のニーズが浮上しています。特に「炭化」が注目を浴びています。
炭化炉開発の現状と方向性
炭化の代表例としては木炭の製造があります。現在、その製造には伝統的な炭焼き技術(築窯やプロック炉など)と、工業的な大量生産を目的とした平炉、スクリュー炉、ロータリーキルン、流動炉などが使用されています。しかし、間伐材や製材所廃材など、性状がはっきりしているものについてはダイオキシン対策の必要性が低く、従来技術で対応できます。しかし、廃棄物焼却処理の代替としての炭化装置においては、ダイオキシン問題は避けられません。
リサイクルを目的とした炭化装置に求められるのは、ダイオキシンを発生させずに低コストで良質な炭化物を得ることです。これを実現するためには、炉を密閉し無酸素(あるいは低酸素)にして高温で蒸し焼きにし、均質に炭化が進むように内容物を撹拌することが必要です。
炭化装置の特性と利点
現状で評価が高い炭化装置としてロータリーキルンがあります。ロータリーキルン式は回転する円筒形の炉に原料を入れ、内熱または外熱で炭化させる方式です。この方式には以下の利点があります:
- 多様な有機分を炭化可能:有機分を含んだものであれば何でも炭化でき、原料に含まれる有機分を可燃性の乾留ガスに変えて燃料を節約できます。
- 単純構造で故障が少ない:炉内に機械的な部分がないため、故障が少なくなります。
- ダイオキシン対策が不要:高度なシール技術が要求されるものの、ダイオキシン除去装置やストーカが不要になり、設置スペースや装置価格の面で優れています。
- 均質な炭化:キルンの回転により焼きムラがなくなります。
この技術が確立されている分野であるため、炭化装置には大手機械メーカーから中小・ベンチャー企業まで多数が参入しており、日量100キログラムから数十トンまでの規模の装置が開発されています。
炭市場の拡大と有機性廃棄物の新用途
炭化が注目される理由の一つは、炭の用途が広がっていることです。リサイクル事業において生成物の流通が難しい場合が多い中、炭化物は比較的見通しが明るいです。昭和10年代には年間270万トン余り生産されていた木炭は、主要燃料として利用されてきましたが、近年では燃料以外の新しい需要が生まれ、生産量が増加しています。
炭の持つマテリアルとしての優れた機能性により、土壌改良材、調湿材、脱臭剤、活性炭など多様な用途が広がっています。特に、シックハウス症候群の原因物質であるトルエン、キシレン、ホルムアルデヒドの吸着効果も立証されており、間伐材や剪定枝、製材所の端材や鋸くずなどの木質系廃棄物の炭利用が拡大傾向にあります。
建設廃木材の炭化
木炭の原料として最も適しているのが建設廃木材です。特に2002年5月に建設資材リサイクル法が完全施行されることは追い風となります。国土交通省の調査によると、建設発生木材の再利用が進んでいないため、用途開発が急務です。埼玉県熊谷市の熊谷カーポンなどがこの分野で事業を展開しており、炭化処理による高付加価値化が進められています。
都市ごみの炭化
年間約5100万トンの一般廃棄物が排出される中、約3900万トンが焼却されています。自治体による分別回収の拡大によりリサイクル率は向上していますが、焼却炉の更新に伴いダイオキシン対策の強化が求められています。都市ごみの炭化は、高付加価値を得る手段として期待されており、新潟県糸魚川市では炭化炉が導入され、石炭の代替燃料として利用される計画です。
下水汚泥の炭化
日本の下水道普及率は2000年末で62%に達しており、下水処理場で発生する下水汚泥の再資源化が進められています。滋賀県草津市の琵琶湖湖南中部浄化センターでは、下水汚泥の炭化施設が稼動しており、土壌改良材や脱臭材として利用されています。
食品廃棄物の炭化
2001年に施行された食品リサイクル法により、食品廃棄物の発生抑制とリサイクルが義務付けられています。食品廃棄物は肥料や飼料として利用されることが多いですが、炭化技術を用いることで新たな用途が開発されています。例えば、柑橘類から抽出したリモネンを前処理に使うことで塩分や油分を除去し、活性炭を製造する技術が開発されています。
家畜排泄物の炭化
家畜排泄物の適正な処理とリサイクルも重要です。北海道の養鶏場では、鶏糞を炭化して高付加価値の肥料を製造し、循環システムを構築しています。
まとめ
炭化処理は、含水率が高く廃棄処分が難しい有機性廃棄物の減量装置として有効です。また、生成された炭はコンポストや溶融スラグと比較して高い商品価値を持ち、リサイクル事業として成立しやすいです。さらに、シックハウス対策や緑化事業などの新しい需要も見込まれます。今後、各種有機性廃棄物の回収方法や生成物の用途に応じた性能が求められ、炭化炉は「焼成炉」として市場拡大が期待されます。
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