2023年10月14日土曜日

人文系環境ビジネスの拡大と定着があって環境対策は本格化(環境ビジネス入門講座 第10回)1996.03.15

環境対策において新しいエコスタンダードを軸とした企 業パラダイムが求められている。が、多くの企業はその構築と推進に足踏み状態にある。公害防止技術や省エネ・省 資源技術では世界トップクラスの日本企業の多くは環境技術による環境維持・保全を第 と考える傾向がいまだに色濃い。その反面、環境管理や環境教育などの取り組みが置 き去りになってしまっている。

1989年~1991年にかけて各企業に環境担当セクションが 続々と誕生したが、そこから聞こえてきたのは技術優先、 利潤優先のプロジェクトが少なくなかった。そこにはなに が欠落しているかというと、自然環境と共生を図るための 経営理念が希薄だということだ。長期的な視野にたって環境マネジメントシステムヘ取り組む先進的な欧米企業からすれば、日本企業は相変わらず かけ声だけの環境対策、ビジネス優先のそしりを免れないだろう。まさにこの点が環境への立ち後れを指摘されるゆ えんだ。1S014000シリ ーズの環境管理・監査の対応に苦慮するのもそのためだろう。環境維持・保全には技術的対 応と、もうひとつ知恵(理念)による対応がある。環境マネジメントシステムにはこの知恵こそが不可欠な拠り所と なる。

日本企業の中にも、1990年当時と比べると、Corporate Environmentalism(企業の環境保全主義)を経営理念に積 極的に取り込んでいこうとする流れがはっきりと見えてき た。しかし、そうした企業においても、その分野での人材 が圧倒的に不足し、骨太な取り組みができないのが現状。 その理由として企業内で環境を考える人材育成を怠ってき たことの他に、それを埋める人材育成システムがこの国に は見あたらないことも見逃せない。たとえば小・中学校で は環境教育の場もないし、それを教える先生が限りなく少 ない。大学においては工学系の環境関連学部はそれなりの人材を輩出しているが、こと文科系においては環境専門学 科および学部が少ないばかりか、社会へ人材を送り出すほ どの内容を持っていない。企業においても社員やユー ー への環境教育担当者が少数にとどまっているなど。

こうした欠落した人材育成システムをいかにクリエイト するかが、日本企業にとって急務なのだ。世界的な環境管理・監査の流れからみて、企業経営および文化の領域において根本的にその対応に迫られるだろ う。そのためには広い意味での技術や利益に偏しない「人文系エコロジー」というか、環境という要素を生態系的 に、文化的に、ライフスタイル的に、あらゆる側面でとら えられる人材育成を図ることが必要だ。その方策のひとつを提案したい。まだごく 部でしかな いが、学生の中には環境を真染に学び、それを職としよう とする学生が出始めている。企業はこうした学生に門戸を 積極的に開放して欲しいものだ。また大学と提据して環境 を第一としたリクルー トシステムを構築するのも意義ある ことだと思う。

私たちエコビジネスネットワ ークヘ大学生からの問い合 わせが相次いでいる。 「ゼミで学んだ環境法を就職先で役 立てたい」 「環境関連企業へ入って環境対策をやっていき たい」 「本格的な環境対策に取り維む環境部を持つ企業をークにできる職場紹介して欲しい」「環境教育をライフワートシステムを探している」など。いずれも従来のリクルでは環境という窓口や受け皿がないため、そうした問い合 わせが舞い込むのだろう。環境ビジネスは、技術系と人文系に大別されるが、欧米 に比べると日本において人文系環境ビジネスが立ち遅れているのは企業に限らず、社会システムにおいても環境にど う対応するかというパラダイムシフトにおいて遅れをとっているからだ。

その骨格を形成するに当たって、人材を供給するための、さまざまな人文系現境ビジネスが立ちあがってくる。それによって環境対策はホンモノになる。企業および社会総体が環境行動計画策定や情報開示、そ して環境教育に本腰を入れなければならない現在、人文系 環境ビジネスの萌芽が随所に見られる。中でも環境教育へ の支援(教育機関や情報システム)、人材育成のための教育システム、環境関連リクルー トシステムが環境ビジネス として拡大すると予測する。 



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