Sunday, April 13, 2025

忘れられた廃棄の記憶 豊島事件 1975年から2022年

忘れられた廃棄の記憶 豊島事件 1975年から2022年

瀬戸内の海に浮かぶ小さな島、豊島。その静けさを破ったのは1975年から始まった産業廃棄物の不法投棄だった。廃油や廃酸、化学汚泥が運び込まれ、島の谷間に無造作に捨てられ、時に野焼きで処理された。空を焦がす黒煙、鼻を突く悪臭。だが行政は見て見ぬふりをし、住民たちの声は長く届かなかった。

1990年、住民たちは香川県を訴えた。「見て見ぬふりは加担と同じだ」と。10年の闘いの末、2000年に和解が成立。産廃は直島へ移され、三菱マテリアルの施設で焼却と再資源化が進められた。搬出量はおよそ91万トン。自然は少しずつ再生の道を歩みはじめたが、2022年の完了までには20年超の歳月と巨額の費用が投じられた。

だが、終わりは来なかった。2018年、撤去跡地から新たに汚泥85トンが発見された。あれほど時間をかけて処理を終えたはずの土地から、またも廃棄が顔を出す。豊島は今も、忘れられた廃棄の記憶をその身に抱えながら、再生の途中にある。

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