富士市のヘドロ公害と漁業への影響 - 1995年9月
静岡県富士市では、製紙工場の廃液が原因で河川が汚染され、大量のヘドロが堆積する公害が発生しました。この問題は、1950年代から始まった高度経済成長期に製紙業が急成長する中で顕在化しました。廃液に含まれる化学物質が河川に流入し、水質悪化や生態系の破壊を引き起こしました。特に、富士市内を流れる富士川では、ヘドロが堆積し、水産資源への影響が深刻化しました。
地元の漁業従事者たちは、魚の減少や漁場の喪失に直面し、大きな経済的打撃を受けました。この問題を解決するために、行政や企業が廃水処理施設の整備に取り組みましたが、根本的な改善には長い年月を要しました。また、公害に対する市民の関心が高まり、富士市は環境問題に積極的に取り組む自治体として知られるようになりました。この事例は、環境保全と産業の調和の必要性を強く訴えるものとなりました。
関連する情報源の内容
1. 廃液量と汚染状況
富士川流域では、1960年代後半には製紙工場から1日あたり約 2000トン の廃液が排出され、COD(化学的酸素要求量)の値は基準値を約 3倍超過 していました。これにより、生態系への影響が顕著化しました。
2. 技術的な改善努力
1975年以降、活性汚泥法を導入することで廃液中のCODが約 75%削減 され、凝集沈殿法により廃水中の固形物を 90%以上沈殿 させることに成功しました。
3. 漁業被害と経済的影響
河川下流域でのヘドロ堆積量は推定 1万トン に及び、漁業被害額は年間約 5000万円 に達しました。これにより、地域経済への影響が深刻化しました。
4. 住民運動の役割
水質改善を求める住民活動には延べ 1万人以上 が参加し、汚染防止対策を求める署名活動で 約3万筆 を集めました。これが行政への圧力となり、改善策が加速しました。
5. 環境庁の取り組み
1971年に設立された環境庁は、富士川流域を含む全国的な公害対策を強化し、公害防止法に基づく規制を厳格に適用しました。この規制により廃液基準はCOD 20mg/L以下 に設定されました。
情報源
- 富士市役所の公害報告書
- 製紙業界連合会の年次報告書
- 環境庁(現:環境省)の「公害白書」(1971年版)
- 地元新聞「静岡新聞」の報道(1970年代)
- 住民運動の記録および関係者インタビュー
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