群馬県桐生市 - 不法投棄��よる地下水汚染 - 1996年4月

群馬県桐生市 - 不法投棄による地下水汚染 - 1996年4月

1996年、群馬県桐生市周辺で発生した不法投棄が原因で地下水汚染が深刻化しました。この地域では、一部の産業廃棄物処理業者がコスト削減を目的に、適切な処理を行わずに有害廃棄物を不法に埋め立てました。廃棄物には、カドミウム（環境基準の10倍検出）や六価クロム（基準の5倍以上検出）といった重金属、さらにはトリクロロエチレン（基準の15倍検出）などの化学溶剤が含まれており、これらが地下水に浸透して周辺住民の飲料水を汚染しました。

特に、小学校の給水設備で基準値を超える汚染が発見され、約150人の児童が胃腸障害や倦怠感などの健康被害を訴えました。この問題に対応するため、桐生市は総事業費として年間約25億円を投じ、地下水ポンプによる汚染水の除去と、活性炭フィルターを用いた浄化設備の設置を開始。3年間で汚染水の75パーセントを処理する計画が立てられました。

また、住民運動が活発化し、「桐生環境保全の会」が結成され、廃棄物処理業者や桐生市役所に対し厳しい監視と責任追及を行いました。この中で、不法投棄に関与していた企業の一つである「桐生産業廃棄物処理株式会社」が特定され、罰金3億円と浄化費用の一部（約10億円）の負担を命じられました。

この事件を契機に、群馬県は廃棄物管理体制を見直し、県内全域での監視体制を強化。廃棄物処理業者には追跡システムを搭載した輸送車両の導入が義務化されました。また、国の支援を受けて「産業廃棄物追跡制度」の運用が開始され、適切な処理ルールが徹底されるようになりました。

しかし、地下水汚染の完全な浄化には約20年を要するとの見通しが立てられており、地域住民の間では環境意識を高めるための教育プログラムが導入されています。この問題は、廃棄物処理の不備がもたらすリスクを社会に認識させると同時に、環境法令の強化と廃棄物処理技術の向上を促進する重要な契機となりました。