電子廃棄物違法輸入問題と2020年代の現状 - 上海港と広東省
### 2011年: 発覚した電子廃棄物違法輸入問題
2011年、日本から中国上海港への電子廃棄物約300トンの違法輸出が発覚しました。この廃棄物には鉛や水銀、カドミウムといった有害物質が含まれ、広東省広州市近郊の非正規リサイクル施設で処理されていました。リサイクル過程では強酸が用いられ、有毒ガスや廃液が発生し、土壌や地下水が汚染。これにより農業や住民生活に深刻な影響を与えました。現地住民からは皮膚疾患や呼吸器系疾患が多発しており、環境保護団体が調査を進行。日本の一部企業が廃棄物管理基準を遵守していなかった疑いが指摘され、国際環境法に基づく追跡調査が行われました。この問題を受け、バーゼル条約を基に日中両国は違法輸出入の監視体制を強化し、適正な廃棄物処理を進める方針を表明しました。
### 2020年代: 継続する問題と新たな取り組み
2020年代においても、電子廃棄物の不適切な処理は依然として深刻な課題です。上海港を経由して中国に輸入される電子廃棄物の量は年間推定40万トンに達し、その60%が広東省で処理されています。これらの廃棄物には鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどの有害物質が含まれ、2023年の調査では、広州市周辺の土壌汚染濃度が安全基準値の2倍を超える地域が複数確認されています。
一方で、大手リサイクル企業である中国鉄鋼リサイクルや国際企業のヒューレット・パッカード(HP)は、持続可能な処理技術を導入。HPは2021年に「クローズド・ループ・リサイクルプログラム」を開始し、年間5万トンの廃棄物を安全に処理する施設を広東省に設立しました。
バーゼル条約に基づく監視と規制も強化され、2020年代後半には違法輸出入の摘発件数が2015年と比較して40%減少しました。しかし、監視が行き届いていない地域が依然として存在し、電子廃棄物の違法処理が隠れた問題となっています。今後、AIとIoTを活用した廃棄物トレーサビリティシステムが導入されることで、廃棄物の流れを可視化し、違法処理の根絶が期待されています。
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このように、電子廃棄物問題は2011年の摘発を契機に改善が進められていますが、2020年代においても依然として多くの課題が残っています。歴史を振り返りながら、今後の取り組みを強化することが求められます。
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