Tuesday, April 8, 2025

洞爺湖温泉の排温水熱ヒートポンプ導入効果 - 2009年2月

洞爺湖温泉の排温水熱ヒートポンプ導入効果 - 2009年2月

北海道の洞爺湖温泉では2008年2月に排温水を利用するヒートポンプ(HP)システムの試運転を開始し、同年3月から本格運転を開始した。設備投資額は約2億円にのぼり、同温泉地の熱供給インフラとしては大規模な再構築となった。導入前は重油ボイラーによる加温が主流であり、燃料コストと環境負荷が大きな課題となっていた。

本格運転以降、重油ボイラーの使用は完全に停止され、排温水を熱源としたヒートポンプによる加温がすべてを担っている。導入の背景には原油価格の高騰や温室効果ガス排出削減の必要性があり、地域ぐるみでの持続可能なエネルギー政策が求められていた。

その経済的効果は大きく、たとえ重油価格が56円/リットルという比較的安価な水準であっても年間の経費削減効果は約5900万円に達すると試算されている。ピーク時の原油価格であればさらに大きなコストメリットがあったと見込まれる。ヒートポンプは外気温に左右されにくく、年間を通じて安定した熱供給が可能であり、観光業にとっても安心できる供給体制を構築することにつながった。

また、このシステムの成功は温泉地におけるエネルギーの地産地消の優れた実例となり、全国の温泉施設への波及効果も期待されている。排熱や再生可能エネルギーの活用という観点からも、自治体・民間企業・観光産業が連携して成果を上げた点が評価されている。

この取り組みは2008年7月に開催された北海道・洞爺湖サミットを契機とする地域の環境意識の高まりにも呼応している。以降、北海道内では雪氷熱や温泉熱などの自然エネルギーを活用する施設の導入が急速に進んでおり、洞爺湖温泉の成功事例はその象徴的な位置を占めている。

【関連情報・参考資料】

- 北海道経済産業局「Cool Energy北海道」(雪氷・排熱利用導入実績、2008年~)
- 北海道環境生活部「地域における自然エネルギー導入事例集」
- 北海道新聞記事アーカイブ「洞爺湖温泉 ヒートポンプ導入で燃料費削減」2008年~2009年
- 環境ビジネスオンライン:「温泉排熱利用ヒートポンプの導入効果と経済性評価」
- 日本空気調和・衛生工学会論文「低温排熱を用いた温泉地におけるヒートポンプの適用事例」

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