不況とは言え、他業者と比べると旅行代理店はまだ善戦しているらしい。国内65社の総売り上げは6.5兆円と聞く。しかし旅行代理店においても集客の企画や運営について「環境保全」が有用な要素となりつつある。最近、観光と環境を調和させた新しい旅のファッションスタイルとしてのエコツアーが定着、人気が高まっている。
エコツアーは、1960年代北欧から始まった。アメリカ、カナダでは1980年代末から「エコ・ツーリズム」という新造語が流行している。観光は経済的利益をもたらす産業として大きく成長しているが、従来の旅の在り方は旅行者だけでなく、受け入れ側にも環境への配慮が欠けていた。そのため、利益優先の観光開発による環境破壊が増大した。
エコツアーは従来の環境に伴う環境負荷を最小限に抑えることを前提に、旅を通して資源を観察し、理解し楽しみ、未来への遺産を残すという環境マインドを育てることが目的である。そこには地域特有の伝的文化も含まれ、旅行者がそれらの知識や認識を身に付けたうえで自然保護への関心を高めていく。結果として観光資源としての自然環境が保護される。
ここ数年、日本においてもさまざまなエコツアーが企画されている。94年には日本自然保護協会日本委員会の手でエコツアーのガイドライン(①自然や文化を訪れる少人数の旅②自然保護、地域文化への敬意、③環境倫理を身に付けたガイド④自然への悪影響を避けた施設⑤保護地域や住民への利益還元)が作成され、エコツアーの在り方が明確に示された。こうしたエコツアーのひとつのスタイルとして人気を呼んでいるのがワーキングツアー、ステディツアー。自然保護やボランティア活動などを日程に組み込んだツアーだ。農山林体験、植林ツアーなどは年々参加者が増えている。集客、採算面の体験の他滞在施設、ガイド役の人材養成などの課題を残すが、エコツアーは確実にブレイクしそうだ。