Thursday, January 31, 2019

生分解性潤滑油① 1999.04.15

潤滑油類は、 建設械や工作機械など油圧装置の作油、 自動車や船舶などのエンジンオイル、 冷蔵庫やエアコンの冷凍機油 (冷媒)などさまざまな分野で使用され、 産業活動はもちろん一般家庭においても欠くことのできない存在となっており、国内の年間使用は約240万キロリットルに及ぶ。 事業所などから排出される廃潤滑油(年間約120万キロリットル)については、すでに回収・再生ルートが構築されており、 さらに通産省 ・工業技術院が99年度から再生重油のJIS化に乗り出すなど、これまで焼却による熱利用しか使い道のなかった再生重油の品質向上と用途拡大を図る取り組みが進められているが、その一方では自然環境中に排出された潤滑油による 環境汚染が問題となっている。

現在、 潤滑油として普及しているのは、 原油を蒸留し てガソリンやLPG(液化天然ガス) 、軽袖などを取り出した後に残った重油をベースオイル(基油)と した鉱油系と、 ガソリン精製段階でできるナフサを原料とした化学合成系の2類だが、いずれも自然環境中ではほとんど分解しない。 また、 潤滑油には使用環境や目的に応じて酸化防止剤や磨耗防止剤などさまざまな添加剤を配合するが、 なかには硫黄やりん系の有機化合物が含まれるものもあり、生態系に悪影響を及ぼすことになる。

油による水質 ・土壌汚染への対策としては、 バイオレメディェーション (徴生物腑) を中心と した対処療法的な技術の開発が進められているが、可能な限り事前対策に取り組むことが重要であり、 潤滑油にも環境対応型の製品が求めらている。欧米では微生物によって水とCO2に分解される生分解性の潤滑油が、 屋外で使用される建設・農業機械などの作油として広く普及しており、
日本でも日石三菱、 ゼネラル石袖、 昭和シェル石油、 モービル石油、 ジャパンエナジーなどの石油会社や 潤滑油メーカーが相次いで製品化。通産省では 「化学物質の審査及び製造などの規制に関する法律(化審法) 」 に基づき、 経済協力開発機構 (0ECD) の 「化学物質の安全性評価のためのテストガイドライン」に沿って、化学物質の生分解性及び蓄積性の試験を実施しており、 ここが生分解性潤滑油の評価基準となってぃる。

自然に分解するとぃぅのが最大の特徴だが、 完全分解には早くとも ーヵ月かかるため、 そのまま使い捨てられるというわけではなぃ。不慮の事故による油漏れなど環境中にやむなく排出されてしまった際に環境負荷をできるだけ少な<するというものだ。今のところコス卜が鉱油系の2~5倍ということで本格普及には至っていないが、各地で盛んに進められている緑地造成や多自然型川づくりなどでも建設機械は活躍しており、環境保全事業を行なう側が環境汚染の原因となっては本末転倒も甚だしく、 欧米の例からも自然環境と深く関わる建設・農業分野での採用が期待大である。

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