2023年9月8日金曜日

環境NGOにおける環境ビジネス 1995.11.15

欧米に比べ、一般市民からの協力や資金などを含め、スケール&パワーともにぜい弱だといわれてきた日本の環境NGO (Non-Ooveromcn叫Org血zation 非即阻鳴)も最近、ようやく活動基盤を整えつつある。

ここ数年、慢性的な人材不足を補い得る新しい傾向がみられる。. 学生や社会人の中に、環境NGOへの就職希望者が増えつつあるという。経済環境の変化に伴って、既存のビジネスのあり方に対する疑問や市民活動への関心の深まりなどの意識の変革が大きな要因である。

そして、NGO活動をボランティアのみに頼らず、とくに経済的に自立するためのビジネスとして立ちあげようという取り組みがさまざまなかたちで現われている。NGO活動を支援する金融機関が出てきたことも、経済的自立を目指すNGOの事業化を促進させていく力となっている。

環境NGOとしての事業は、多摩大学経営情報学部の北矢教授が提唱する「社会価値創出企業」と言えそうだ。社会価値創出企業とは、収益を上げる「事業価値」、社会に貢献する「社会価値」、働く人間の自己実現を図る「人問価値Jの三つをバランスよく備えた企業を指している。89年設立の「市民バンク」はその支援機関の一つ。発展途上国の製品輸入などを手掛けるNGO、(株)プレス・オールターナティブ(PAグループ)と永代信用紺合(東京)が共同出資し、環境保全や社会福祉などに関する事業に対して無担保融資を行う事業基金だ。PAはこのほか女性起業家のための支援線織WWB(女性世界銀行)日本支部も90年に発足させている。

PAグループは(株)プレス・オールターナティブを母体として、現在、上記の事業のほかに、「第3世界ショッブ」と「(株)環境クラプ」を事業部門としてもっている。それぞれ有給スタッフを多数かかえ、活動の幅を広げている。88年にスタートした会員制の有機農産物や水産物の戸別宅配システム「らでいっしゅぽーや」は環境NGOのビジネスとしては最も成功している例だろう。契約栽培ー全量引き取りー全最会員引き渡し、のシステムをとり、全国2500戸の生産者と約5 万5000世帯の会貝とを結んでいる。94年度の売上高は13雌紅円。母体である日本リサイクル市民の会は、84年発足。「サスティナプル(持続可能な)循環型社会の創造」をコンセプトに掲げ、常に問題提起、代替案提案を行ってきた。常勤のスタッフ数240名、非常勤も含めると600名近い。生協運動などを除けば日本最大級の環境NGO だと言える。

やはり有機農産物や無添加加工食品の生産者と消費者を結ぶ卸・小売のグループに「ポラン広場」の宅配がある。85年に設立、共同仕入れセンターは現在札幌、浦和、名古屋、豊中、福岡の5 カ所にあり、全国67の小売店は地域のコミュニティーセンターの役割を果たしている。スタッフ数は300名。94年度の売上はの億円。従来の流通システムでない、もうひとつの新しい流通のあり方を切り拓いている。環境NGOの環境グッズ専門店展開では、阪急百貨店が94年から全国展開しているザ・ナショナル・トラストギフトショップがある。ロンドンに本部を置く英国の環境保護団体、ザ・ナショナル・トラストの事業部門会社であるナショナル・トラスト・エンタープライズと提携。同社が開発したホームドレス、バジャマなどの衣類から雑貨、文具、食器、洋菓子まで100種、3000品目の商品を販売している。英国の本部事業部門は国内で130店の販売店を運営し、年商は6ofl怠円に上っている。阪急はフランチャイズチェーン展開のため資本金5000万円で子会社エヌ・ティー・イーを設立した。

一方、行政や企業、市民レベルでの環境意識が高まるとともに90年代に入ってから行政や企業サイドから環境NGOの経験、知識、技術などを政策や企業経営に反映させようとする動きが出始めている。これまでともすれば対置関係にあった同士との問に協力体制が敷かれつつある。こうした流れも数々の環境NGOを社会価値創出企業として成長する機会を与えることになる。こうして環境NGO自らが経済的な基盤をつくることによって、そこへの参加者が有給で「食える市民運動」として多くの人材や活動の場を確保し、運動の継続へとつながっていく。それは、国や政府、企業の枠を越えた新しいエコスタンダード形成の一翼を担うチカラになるだろう。




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