2023年9月5日火曜日

動き始めた廃プラの 熱分解油化処理技術 1994.12.15 5

 ■廃棄プラスチックの処理は困難を極める。燃やすと有蒋な塩素系(ダイオキシンなど)の有害物質が発生し、だからといってそのまま埋め立てるとかさばり、埋め立てられた地盤を不安定にする。一部は再利用されるものの、結局、今のところはほとんどが不燃ゴミとして直接埋め立てられているのが現状だ。1972年からの20年間だけを見ても、廃プラの排出量は190万トンから700万トン近くまで増えている。一般廃棄物の中で廃プラが占める割合は、重量では1割程度だが、容積にすると25%。ところが最近、この厄介者の処理への対策が本格化しようとしている。以前から、廃プラは公園のベンチやトレイ、棒、日用品などに一部が再生利用されていた。マテリアルリサイクルと呼ばれているものだ。それに対して廃プラの燃料化や熱エネルギー利用を目的とする「サーマルリサイクル」が、今注目されている分野だ。中でも熱分解による油化技術に動きがある。プラスチックの原料は石袖だから、廃プラをもとの石袖に還元しようという試み。1キロの廃プラから1リットルの袖化が可能。

■廃プラの油化処理工程は7段階

94年11月`厚生省の外郭団体である財団法人廃棄物研究^財団から、廃プラ池化処理技術の実用性を検討した報告書1がまとめられた。全国の10数施設の実験的プラントのうち、7ジリサイクルの2施設の詳細を具体的にレポートしている。事実上、この2施設の実用化にGOサインが出たと、業界内では受け取っている。「公園のベンチ、棒や杭などのマテリアルリサイクルは用途が限られます。最近、カーベットや洋服素材に再利用されるという新技術が発表され、多少、用途が広がったとはいえ、それくらいのものでしょう。でも、袖化技術というのは、ガソリン、灯油、軽池などに変わるわけですから、いろいろな使い道があります。廃プラのリサイクルを目指す企業ならどこでも真っ先に考えたい技術なのです」とは、社団法人プラスチック処理促進協会の梶光雄技術開発部長。同協会では全国の熱分解袖化プラントを調査している。それによると油化のプロセスは各社が同じような構造を持ち、次の7段階から成り立つという。

(1)前処理工程廃プラスチックの中に混入する異物(缶、ビン、金属類等)を分別分離した後、廃プラスチックを(2)の溶融ドラムの中に入り易い大きさまでに破砕する。

(2)溶融工程廃プラスチックを約200-300度に加熱し、それ自体を液状に溶解するか、灯油等の溶剤を入れ溶解し液状にする方法がある。この工程で若干の熱分解が行われることがあり、特に廃プラスチック中に塩化ビニル(以下PVC) が含まれると、まず200-250度の温度でPVCの分解が起こり、有害な塩化水素ガスを発生する。このガスを系外に排出させれば、大部分の塩化水素がこの溶融工程で除かれることになる。最近はここを脱塩化水素工程として利用する方式が注目されている。なお、この工程で発生した塩化水素ガスは、中和処理工程へ送られ処理される。

(3)熱分解工程この工程の注目点は、温度を上げれば分解反応速度は上がるが、一方、液状成分の収率低下、炭化の進行といった不都合が起こる。このような問題を抱えているので、どの温度範囲を選ぶかがプロセス設計上の鍵になる。液状廃プラスチックを約300~500度まで加熱し分解する。常温で液状となる石油成分をできる限り多く得るために、触媒(ゼオライト、金属)を使用する場合がある。最近、この触媒が開発されたため、.液状物質、即ち生成袖の収率及び品質が向上した。触媒を使用しないで重質油(軽池、重池)を減少させ、より多くの軽質油(ガソリン、灯油)を得るには、より高温下で長時間の熱分解反応を行う必要があるが、そうすることによって、炭化現象が起こり、ラインの閉塞などの運転トラプルを発生させたり、残さが増加したり、かえって収率及び品質の低下をまねくことにもなる。触媒を使用したほうが池の収率、特に軽質油の収率が高くなり又品質面でも優れているということができる。

(4)生成油(製品)回収工程熱分解工程で発生した高温の熱分解ガスを、冷却水で常温まで冷却し液状とし製品を得る。生成池の品質、性状、収率は、投入するプラスチックの種類、反応温度、反応時間、触媒の使用の有無と種類等様々な条件によって大きく変動する。

(5)残さ処理工程前処理工程で分離できなかった徴小の異物(砂、ガラス、金属、木片等)及ぴ熱分解で生成した炭化物等を濾過回収又は除去する。

(6) 中和処理工程PVCの熱分解により発生した塩化水素ガスは苛性‘ノ ーダ、消石灰等アルカリで中和し無害化又は回収する。

(7) 排ガス処理工程熱分解工程で発生した凝縮しがたい可燃性のガス( 一し! 酸化炭素、メタン、プロパンガス等)を処理する工程である。フレアースタック等でそのまま焼却するか、熱分解用の燃料、又は電気、蒸気のエネルギー源に変えて系内で再利用する場合がある。


■採算ベースに乗りにくい廃プラ油化技術

「実は20年前にうちの協会でも実験プラントを動かしているんですよ。でも当時と比較すると現在のフジリサイクルのプラントはあらゆる面で改善されています。とくにここ3~4年で触媒を使い出して、ずいぶん技術が向上しましたね。以前は生成油の中に重質油が多く含まれていましたけど、触媒によってガソリンや灯油などの炭素数10以下の軽質油が多く生成されるようになったんです」(梶さん)ただ、触媒が生成油の軽質化には役立っているが、熱分解の触媒にはまだ技術開発の余地があるという。ではフジリサイクルのプラントで生成された油の品質はどうなのか。社団法人プラスチック処理促進協会の分析によると、ガソリン、灯袖、軽油などいずれもほぼns規格,に相当する。具体的な用途については、財団法入廃棄物研究財団の報告書で、

「生成油は、工場テスト及びオンライン燃焼により、ポイラー及び加熱炉等の代替燃科(灯油バーナ、重油バーナともに)として使用できる。また、ガスタービンにも適用可能である。パイロットプラントでは、生成池の一部を系内の加熱炉用燃料として連続使用している。さらーに、分縮または蒸留操作により、灯軽油留分相当袖は内燃機関(ディーゼルエンジン)の代替燃科に使用でき、ガソリン留分相当池はガスタービンの代替燃料等に使・用できる」'.とまとめられている。ところが問題は経済性。廃プラの袖化技術はなかなか採算ベースに乗らない。

「ポリエチレン(以下PE) 、ポリプロビレン(以下PP) 、ポリスチレン(PS) の3 種類のプラスチックの処理だけだったら、すべてうまくいきます。でもどうしても塩化ビニルが入ってくるので、熱が加わった段階で塩化水素が発生してしまいます。その除去装置をプラントに維み込まなくてはいけません。また前処理工程の分別機で分別しきれない部分を人手に頼るため人件費もかかります」(梶さん)

同協会の概算によると、1年に5000トンの生産能力のプラントで建設費は約12億円。さらにランニングコストとして、1キログラムの生成油を製造するために、設備償却費(15年定額)14円、修繕費・金利·保険料等11円、触媒費・用役費(電力、蒸気自給) 3円、人件費・一般管理費(IO人)18円で、合計46円かかる。この数字は、現在フジリサイクルが廃プラを2万円受けて引き取り、1年に3000トン.の処理で採算ベースに乗るという結果をもたらしている。自動車の廃車時にも見られる逆有償のシステムの導入を余儀なくしている。






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