Friday, September 1, 2023

RMP (リサイクル・マイン・パーク) 1999.08.15

 ●年間約120万トンも発生し、ほとんどが埋立処分されている廃家電及び廃自動車のシュレッダーダストについては、両業界ともにその減容・リサイクルに向けた取り組みを強化している。日本鉄リサイクル鉱業会の試算によると平均的なシュレッダーダストには璽量比で、銅3 %、鉛0.3%、亜鉛0.5%が含まれており、単純計算すると年間で銅3万6000トン、鉛3600トン、亜鉛6000トンが毎年廃棄されていることになる。また、家電製品の原型埋立分(年間23万トン)には9.4 % (5万8000トン)の銅が含まれており、これらを鉱物資源として捉え、リサイクルしていくことで資源の安定供給を確保することができる。非鉄金属の多くは鉄よりも融点が低いため、鉱石から精錬するよりも少ないエネルギーで再生できるなど省エネにもつながる。

●そこで注目されるのが通産省が95年に掲げた「リサイクル・マイン・バーク(RMP) 構想」だ。この構想は閉山した鉱山に残された選鉱、製錬、坑排水処理施設を利用してシュレッダーダストをはじめとする金属含有廃棄物から金属を回収、再資源化しようというもの。2001年4月に施行される家電リサイクル法への対応策としても注目されており、自治体と非鉄金属メーカーなどが中心となって各地で取り組みが進められている。RMP構想の初年度認定を受けた北中部地域では、神岡鉱業(岐阜県吉城郡)と日鉱三日市リサイクル(富山県黒部市)を中心に計画が進められている。神岡鉱業では認定の前年(94年)から自動車用バッテリーのリサイクルを開始、現在は月4000トンのバッテリーを処理して鉛、金、銀、プラスチックを回収·再資源化しているが、今後は廃家電·廃OA機器、シュレッ10ダーダストなどからの有価金属の回収・減容化についても検討を行なうことにしている。日鉱三日市リサイクルは日鉱金属の三日市製錬所を母体に95年11月に設立。シュレッダーダストの焼却処理を行なうと同時に電気炉を利用して亜鉛滓など亜鉛二次原料から蒸留亜鉛を取り出している。この製錬プロセスは蒸留亜鉛だけではなく、銅及び鉛も濃縮して回収できるのが特徴で、回収した銅滓と鉛滓は日鉱グループの佐賀関製錬所(大分県佐賀関町)に輸送され銅及び鉛地金として再生されている。ただし、富山県が98年度に行なったシュレッダーダスト処理事業の経済性評価では、シュレッダーダスト、廃プラ、廃液の受託処理収入と銀lなど地金の販売収入の合計は2771万2000円/月。一方、焼却や製錬、スラグ処理にかかる費用は3174万7000円で、403万5000円の赤字となっている。主な原因は金属回収コストが地金販売収入の2 倍以上もかかることで、試算では現状(800トン/月)の2 倍以上のシュレッダーダスト処理を行なえば経済的に事業が成り立つことから、廃家電•OA機器受け入れ拡大の方向で検討を進めている。

●一方、とくに休廃止鉱山の多い東北地方ではRMPを地域振興事業に位置づけており、モデル地域の秋田県北鹿地域では98年6 月、県、鉱業関連企業、地元自治体などで構成する「リサイクル・マイン・バーク推進協議会」を設立。同和鉱業系の花岡鉱業の花岡鉱山(秋田県大館市)と小坂製錬の小坂製錬所(小坂町)の鉱山跡地を利用した、家電リサイクル事業化への取り組みが具体的に動き出している。計画では東北3県(秋田、青森、岩手)を対象にテレビ、冷蔵庫、洗湿機、エアコンの4品目を回集し、花岡鉱業の選鉱設備で破砕、浮遊選鉱機で銅や鉛を取り出す。それを小坂製錬所に運び純度の高い金属に再生、作業過程で発生する焼却灰も道路の路盤材などに活用する。

●すでに小坂製錬では、電線くずや電子基盤からの金属回収や廃パッテリーからの鉛回収など一部事業化していることから、廃家電の収集システム及び最低限の前処理施設さえ整えばす環境ビジネスレポートぐにでも対応できるという。99年7月から実証試験を開始しており、作業工程やコストを盛り込んだ報告書を2000年3月までにまとめる方針。家電リサイクル法の施行に合わせて工場を稼働する予定で、事業主体は同和鉱業が99年7月に設立したエコリサイクル。地元からの新規採用を中心に50~60人の雇用が生まれる見込みだ。サテライトと呼ばれる一時保管施設を18カ所に設けて回収効率を上げ、当面は3県で排出される家電4品目の30%に当たる年間約13万2000台を確保する計画。これに合わせて県では通産省のエコタウン事業の99年度認定を目指し、家電リサイクル、堆肥化施設、固形燃料発電を柱とする県北部エコタウン構想を掲げており、認定されれば事業費の半分が補助されることになり、計画が一気に加速することは間違いない。87年の細倉製錬所の閉鎖に伴い過疎化が進んだ宮城県鶯沢町でも、新たな産業として使用済みバッテリーから鉛を取り出すリファイン事業に取り組んできたが、97年度から家電リサイクルに向けた調査検討も開始。消費者からのリサイクル費用があれば年間JO万台の処理で採算がとれるという。同町もエコタウンの認証を狙っており、旧細倉中学校跡地に建設する公開型家電リサイクル工場を中核施設に位置づけた「環境と調和する地域づくりプラン」を策定。三菱マテリアルを中心に家電メーカー数社で新会社を設立し年間30万台を処理する。かつて鉱害を経験した同町は産官民のバートナーシップに基づきソフト面に重点を置いており、施設や情報を公開することで1)サイクルを全県に波及させる効果を狙う。

●現在、鉱山・製錬事業所は全国に46カ所あり、そのほとんどが二次原料という形でスクラップ、廃棄物の受け入れを行なっている。家電リサイクル法の施行を目前に控え各家電メーカーではリサイクル工場の建設に余念がないが、個別の取り維みには限界がある。RMPは既存の鉱山施設を利用することにより少ない投資で迅速にインフラを整備でき、また、地域の産業振興にもつながることから今後の動向が気になるところだ。




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