■廃棄時に有害物質を発生せず、リサイクル性に優れた環境配慮型の電線ケーブル(通称エコ電線)の市場が急激に拡大している。従来、電線被覆材は塩ビが主流だったが、難燃剤に含まれる臭素・塩素などのハロゲン物質は焼却時にダイオキシン生成の原因となったり、鉛やカドミウムなどの重金属が土壌中に溶け出して環境汚染を引き起こす問題があった。そのため、電線ケープルメーカー各社は98年初めごろからエコ電線を相次いで市場に投入、いまやエコ電線を開発していない電線ケープルメーカーは皆無である。
■98年に日本電線工業会によってエコ電線の規格が定められたことも大きく、建設省の主導により98年秋頃から公共事業を中心に軌道に乗り、民需でもゼネコンが試験的に採用をはじめている。また、規格は現在、産業用の7品目だけだが、同軸ケーブルや通信ケープルなど主要品についても99年秋をメドに規格化される見通しであり、今後の需要増に対応するため、即納体制の整備や量産効果による低価格化を狙い、受注生産から在庫生産に切り替えるメーカーもでてきた。
■93年に特定臭素系難燃剤を含まない電子機器用ポリエチレン電線を製品化した住友電気工業では、98年1月に汎用電線ケープル「エコロジー&リサイカプルケープル」を業界に先駆けて発売。被覆材料をボリオレフィン系樹脂に統一することで樹脂の分別が不要となり、リサイクル性を高めている。樹脂の配合を変えて難燃性や収縮率を改善し、被覆材として必要な品質を確保している。
■98年5月には「電線エコプロジェクト」を設定。グリーン調達や有害ガスの発生抑制、リサイクル性の向上などを柱とした製品開発を推進しており、98年度の受注はloJ意円を超えた。99年6 月には電子機器用電線について在庫販売を開始、9月末までに特定用途電線を除く一般電子機器用電線すべてを鉛·ハロゲンフリー製品に切り替える計画で、99年度は産業用電線だけでも60億円前後の売上げを見込んでいる。96年に耐熱性ポリオレフィンを採用した縦系配線用LANケーブルを開発し「エコグリーンシリーズ」として商品展開している日立電線では、輸送機用電線(自動車・鉄道車両用)と建設分野向け設備用電線(低電圧ケープル、LANケープル、耐火ケーブル)、電子機器用電線の一部(内部配線用)について在庫販売体制を整えており、コストは量産効果によって従来品の10-20%程度に抑えている。また、三菱電線工業や古河電気工業は、落ち込んでいる国内電線需要をカバーするべく、海外市場の新規開拓に力を入れている。
■電力、通信、制御などのラインアップを揃える三菱電線の「エコケープル」は、シンガポールの地下鉄の電力用として98年秋から継続納入が決定。耐熱温度100-150度Cまでの耐熱配線材を揃える古河電工も99 年6 月に同事業の受注に成功している。工事予算のうち、電カケープルは年5~1叶急円の需要が見込まれるという。家電リサイクル法によってリサイクル対応が迫られる家電業界でもエコ電線に関する関心は高く、松下電器産業が家電メーカーでは初めてエコ電線を開発、99年秋に実用化する。第1弾としてテレビに採用し、低電圧のリード線を中心に順次切り替えていく方針だ。今のところエコ電線の市場規模についてはっきりした数字は出ていないが各社の実績から見ると数十億円程度と推測される。日本電線工業会によると、98年度の電線・ケープル全体の市場は出荷金額ベースで1兆1200億円で、エコ電線は1 %にも満たないが、官公需要はもちろん、民間でも家電や通信分野など潜在需要は大きく、市場確立は間近い。
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