白き飯、暗き闇――戦野に斃れし友へ（明治三十七〜三十八年・日露戦役）

白き飯、暗き闇――戦野に斃れし友へ（明治三十七〜三十八年・日露戦役）

日露戦争のさなか、俺たち陸軍の兵には、白く光るような飯が支給されていた。見たこともないほど真っ白な米。農家育ちの俺らには、祭りの日にも口にできぬ贅沢で、最初は心底嬉しかった。まさか戦場で、腹いっぱい白い飯が食えるとは。

だが、月日が経つにつれ、仲間たちの顔に陰りが差し、力が抜けていった。食っているのに、どこかおかしい。誰からともなく「妙な病」と囁かれたが、最初は笑い話にしていた。それも、すぐに笑えぬものになった。

海軍の兵たちは麦を混ぜた飯を食い、こんなふうにはならなかったらしい。あちらでは軍医の指導が違ったと、後から聞いた。俺たちを診ていた軍医は、「これは伝染るものだ」と言い張り、麦飯を忌み嫌った。何が正しかったのか、俺には分からない。ただ、俺たちは白い飯を食いながら、日に日に弱っていった。

戦で撃たれて死ぬならまだしも、飯を口に運びながら、命が削れていくなんて。友の顔色が失せ、寝たきりになり、静かに消えていくのを、俺たちは黙って見つめるしかなかった。

もし、あのとき違う飯が支給されていたなら。そんな思いは、いまも心の底に沈んでいる。眩しかった白き飯の光と、そのあとに訪れた底知れぬ闇だけが、今も俺の胸に焼きついて離れない。