竹は燃料になるか 里山からエネルギーへ 竹バイオエタノール技術の挑戦(2008年12月)
竹からのバイオエタノール生成技術は2000年代後半に日本社会が直面していたエネルギー問題と地域環境問題が交差する地点から生まれた技術である。2008年前後は原油価格の高騰と地球温暖化対策への関心の高まりを背景に再生可能エネルギーの導入が国家的課題として議論されていた。バイオエタノールは有力候補であったがトウモロコシなど食料資源を原料とする方式は食料価格高騰や国際的批判を招き非食料バイオマスの活用が強く求められていた。
この文脈の中で注目されたのが竹である。竹は成長が早く再生力に優れる一方管理されなくなった里山では放置竹林が拡大し農地侵食や生態系の単純化景観悪化などの問題を引き起こしていた。静岡県西部を含む多くの地域で竹は処理に困る存在となっておりこれを資源として活用する技術開発は地域社会からの要請でもあった。
静岡大学と浜松市の竹粉メーカーによる共同研究はこうした背景を受けて進められた。技術の特徴は竹を約50マイクロメートルという微細な粉末に加工しレーザー処理によって発酵を阻害する不純物を除去する前処理技術にある。これによりセルロース抽出効率が向上しバイオ変換に適した状態が実現された。
次の工程では抽出されたセルロースを糖に変換し発酵によってエタノールを生成する。当時としては高水準となる糖変換効率75パーセントを達成し3年以内に80パーセントへの向上を目標としていた。この技術は再生可能エネルギー生産と里山管理を同時に成立させる可能性を示した。大学と地域企業の連携によるこの試みは2000年代後半の循環型社会への模索を象徴する挑戦であった。
No comments:
Post a Comment