暴排強化により半グレ勢力が台頭 ― 当時の時代背景も踏まえて詳しく
2010年代に入ると、全国的に暴排条例が施行され、暴力団組織への締め付けが過去に例のない規模で強化された。銀行口座の開設拒否、企業-行政との関係断絶など、社会基盤そのものを遮断する制度的措置が徹底され、暴力団は従来の資金源と活動領域を大きく損なった。その結果、暴力団勢力は縮小し、地域社会における可視性も低下したが、裏社会全体の犯罪実態が解消したわけではなかった。むしろその影で急台頭した存在が、半グレである。
暴排政策は、縦組織的で地域密着型の暴力団には大きな抑止効果をもたらしたが、半グレは組織が固定化せず、ネットワークもゆるやかで、縄張り意識や看板を持たないため、制度的規制が浸透しづらかった。とりわけ特徴的なのは、匿名性と流動性を生かして、高齢者を中心とした特殊詐欺やアポ電強盗など、実体をつかませない犯罪形態へ移行した点である。この変化により、裏社会の犯罪構造は管理可能な組織型から管理困難な分散型へと移り、取り締まりの難度が高まった。
さらに2010年代半ば頃からは、暴力団側が半グレの勢力拡大を無視できなくなり、半グレを統率して上納を得たり、逆に自ら離脱して半グレ側へ加担する例も出始めた。特殊詐欺における暴力団構成員等の関与も確認され、裏社会の内部構造は混在し、境界線が曖昧化した。暴排の強化は暴力団の衰退を導いた一方で、犯罪を地下化-匿名化させ、社会が新たな犯罪類型に直面する転換点となったのである。
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