2013年11月13日水曜日

「対岸の火事」ではない。中国発PM2・5は日々、日本列島に降り注ぐ。。

中国の各都市部では、本格的な冬の到来を迎え、質の悪い石炭燃焼による暖房が加わって、さらにPM2・5(微小粒子状物質)による「濃霧」(光化学スモッグ)が多発することが予想される。
地域によっては、通年でも視界が50㍍以下にまで悪化。北東部のハルビンでは5㍍先も見えない日も。高速道路の閉鎖や航空便の欠航や遅延等の影響をもたらす一方、市民生活にも多大な影響を及ぼしている。特に市民の著しい健康被害が懸念されているのだ。
北京では10月下旬、街一面が濃霧に覆われたことから、日系企業では従業員に外出を控える等注意を呼び掛けた他、空気清浄機の購入補助金を支給する等の対策を講じている。家族の帰国を考える駐在員も増えてきているという。

そ もそもPM2・5とは、火力発電所や工場のばい煙、自動車の排ガス、微細のホコリ等に含まれる直径2・5㍃㍍(マイクロは100万分の1)以下の微小粒子 状物質。肺の奥まで入り込みやすいため、ぜんそくや肺がん等を誘引する。高度成長期の日本では、川崎ぜんそく、四日市ぜんそくの発生原因となった。
PM2・ 5中の硫黄酸化物(SO2)、窒素酸化物(NOⅹ)は石炭、石油等の燃焼によって発生。硫黄酸化物の主な発生源は製鉄所、発電所、工場等。窒素酸化物の発 生源は硫黄酸化物と同様だが、他に自動車、船舶、航空機等の移動発生源からも大量に排出される。都市部の濃霧は硫黄酸化物が起因している。どちらも大気汚 染の原因物質であり、生態系の崩壊(植・生物の枯死)、健康被害等をもたらす。ちなみに中国では毎年、呼吸器系疾患で約50万人が死亡するといわれてい る。

こうした中国での深刻なPM2・5問題は、単なる「対岸の火事」では済まされる問題でなく、将来にわたり日本に甚大な影響を受けることを予想しなければならないだろう。
中国を発生源としたPM2・5が、常に偏西風に乗って日本へ飛来しているのだ。関東では観測値が注意喚起を出すレベルに達していない理由から注意喚起は出されていない。しかし中国に近い九州各県を中心とした西日本では今年3月以降、度々注意喚起が出されている。

中 国のPM2・5の改善策について日中の学者・専門家らが協議する「生態文明・緑色発展への道」(11月4日/精華大・野村総研)と題したシンポジウム等は 開催されるものの、中国内の環境法の整備、公害被害者の賠償や救済等の検討の範囲内での議論が中心。それも精華大の張坤民教授によると、環境対策には政府 各部門や企業の利益が絡むため、現状では「関連法を実際に執行するのは難しい」とのこと。ましてや、中国政府はPM2・5の日本への影響についての関心は 薄い。日本政府もPM2・5について深く触れようとしない。実務者レベルの会合は行われているようだが、内容について私たちには報道されていない。

そんな間にも、中国発のPM2・5は確実に日本列島に拡散され、私たちの健康をじわり蝕みつつある。また空気中の水分と結合し、雨となれば「酸性雨」となり大地に降り注ぎ、自然環境を破壊している。
もし、この状態を放置し続ければ、日本だけでなく、韓国、台湾等近隣諸国も大打撃を受けることはまず間違いないだろう。健康被害はもちろん、森林は枯れ、農地や湖沼は酸性化、建築・建造物のコンクリ-トは酸性化してボロボロに劣化する等深刻な事態を招く。
北京行の空港の売店で、飛ぶように売れ生産が間に合わないPM2・5対策用マスクと聞くが、はてさて、今ほんとに求められているのは日中両国での「日中PM2・5拡散防止条約」の締結でないだろうか?
日本には世界に冠たる脱硫、脱硝技術、排ガス対策技術を保有する。これらの技術を両国で共有、新たな技術革新を図ることが緊急課題である。
21世紀は環境の世紀。悪化を辿る地球規模の環境維持・保全が最優先すべき重要課題であり、20世紀型の領土、領海の線引きの時代ではないんじゃないのか?