2023年8月31日木曜日

海外からの環境技術導入事例 1999.08.15

●日本は度重なる公害問題や2度のオイルショックに見舞われた背景から、とくに公害防止や省エネに関して世界有数の環境技術立国へと成長し、途上国をはじめとする各国に多くの技術を移転してきた。しかし、地球規模で環境問題が取りざたされている現在、年々強化される環境規制に対し、より高度な技術が要求されるようになっている。環境ビジネス市場で生き残っていくためには、当然、他社より一歩抜きん出た技術を持つことが重要だが、新技術の開発には膨大な研究時間とコストがかかる。そのため海外企業の持つ技術を導入し、自社技術との維み合わせや装置同士をシステム化することで足りない部分を補完する事例が増えている。

●規制強化によって瀧入が進む海外技術そういった動きが顕著に現れているのが自動車業界。排気ガスに対する規制は国際的にも強化の方向で進んでおり、改正省エネ法でもガソリン自動車全体で2010年度に95年度比約21%、ディーゼル自動車全体では2005年度に同約13%の燃費改善が求められている。省エネ法では一定の量産普及が実現していないハイプリッドカーなどは対象から外れるため、現在市販されているガ‘Jリン車で2010年度目標をすでに達成しているのは、直噴式やリーンバーン(希薄燃焼)などの低燃費エンジンと、無段変速機(crv)、コンピュータによる最適空燃費制御などを組み合わせたごく一部の車種に限られている。ガソリン車の燃費を30%向上させたといわれる直噴ガソリンエンジン(GD!)は三菱自動車工業が96年に世界に先駆けて商品化したが、研究開発にはおよそ30年、延べ叩叩億円もの投資を必要とした。新しいエンジンの開発は大手企業といえども単独では難しくなっており、合併や相互技術協力、ライバル社へのエンジン供給といった国際的な再編が加速。マツダは2001年以降、資本提携関係にある米国フォード・モーターと排気量1500~2000ccの小型エンジンを共通化し、開発コストの削減と量産効果による価格競争力の強化を狙っている。とくに数ある低公害車のなかでも最も普及が期待されている燃料電池電気自動車(FCEV)についてはトヨタ自動車が96年に独自開発し2003年実用化をメドに研究が進められているが、日産自動車や本田技研工業は、自動車用燃料電池開発にかけては世界トップであるカナダのバラード・パワー・システムズから燃料電池を調達することでトヨタを追う。日産は三菱化工機と共同開発したメタノールから水素を取り出す改質器を組み合わせ、本田は米国の再生可能エネルギー研究所(NREL)と共同で、炭素原子を筒状に並べたカーポンナノチュープを水素吸蔵に活用する技術を開発中で、いずれもトヨタと同時期の実用化を目指している。また、99年7月にはヤマハ発動機も二輪車メーカーとしては初めてバラード社と1年更新のリース契約を結んでおり、両社は研究者同士の技術交流を行ないながら、二輪車や船外機など応用分野への実用化に向けた技術開発を進めるとしている。

●規制緩和によって新たに認められた技術逆にこれまで禁止されていたために開発が遅れている技術が規制緩和によって認められ、その分野で先行する海外企業から技術やノウハウを導入する例もある。その代表がポリ塩化ビフェニール(PCB)の処理技術で、98年6月の廃棄物処理法の改正に伴い化学的処理が認められた。PCBはコンデンサーの絶縁油や熱交換機の熱媒体などに使われていたが、肝機能障害や皮膚炎などを引き起こす危険があり、68年のカネミ油症事件をきっかけに72年に製造禁止となっている。PCBは自然には分解しないため、これまでは高温焼却処理を行なっていたが、ダイオキシンを発生するなどの問題からいまだに約4万トンが保管・管理されたままになっており、化学処理は新たなPCB処理技術として注目されている。住友商事の子会社、日本ニュクリアサービス(東京都千代田区)と住友電気工業、古河電気工業の共同出資会社、日本原子燃料工業(東京都千代田区)は、カナダの電力会社、・オンタリオ・ハイドロ社が開発したPCBの化学的処理技術「OSD法」を導入。鉱物油に金属ナトリウムの微粒子を分散させたナトリウム分散液(SD)をPCB汚染物質に混ぜ、化学反応により塩素分を塩化ナトリウムとして回収・無害化するもので、残ったオイルは無害で、そのまま燃料として利用できる。可搬式のためPCB貯蔵現場での処理が可能で、カナダでは86年以来1万トンを超える処理実績を持つ技術。0.5ppmの低濃度からPCBそのものの濃度まで処理が可能で、カナダより厳しい日本の基準値(0.5ppm)以下にできることが実証されている。一方、産業廃棄物処理の松田産業もドイツの環境工ンジ、ALDバキューム・テクノロジーズと日本に合弁会社、ゼロ・ジャバンを設立し、ALDが開発した化学処理技術を使い、PCBや金属を含む廃池から金属を分離して無害化する事業を開始。1000~100分の1気圧の真空中でPCBが使われている変圧器やコンデンサーを400度Cに加熱。物質ごとの沸点の違いを利用して、気化したPCBを含む廃袖と鉄や銅、アルミニウムなどの金属を分離・回収する。PCBは化学処理によって塩素分を除去、無害なビフェニールに変え、回収した金属はリサイクルに回す。今後も新たな環境規制の強化及び緩和によって、新しい環境ビジネスが派生してくるのは間違いなく、これまで以上に海外からの技術導入も活発化してくる。とはいぇ、まった<未知の分野に手を出すのは得策ではない。その国では十分に効果を発揮した技術でも、気候風土その他条件の異なる日本では適合しない場合がある。たとえば有害物質に汚染された土壌や地下水を徴生物の働きによって浄化するバイオレメデイエーション技術は、国あるいは地域によって生態系が異なるため、不用意に用いると新たな環境破壊を生み出しかねない。そうした場合、H本向けに改良する必要があるため、、これまで培ってきたノウハウを生かせる分野に限定される。重要なのは日本と海外技術のハイプリッド化によって、より柔軟に対応できる環境技術が生み出されるという点だ。



2023年8月30日水曜日

保有技術のニーズと連携先を探る産業間連携技術マップ 1999.08.15

 これまで、市場原理の働きにくい静脈産業では、他分野との連携による技術開発が積極的には行なわれてこなかった。だが今後、互いのニーズやシーズを有効に活用しながらの循環技術開発は、効率的な循環型社会の構築とそれに併せた静脈産業拡大に有効な手段となり得る。ここにあげたマップは、通産省の産業構造審議会・廃棄物リサイクル部会が先ほど試作した「産業問循環技術マップ」。技術供給側を縦軸に、その技術の利用・普及により効果を享受する需要側の産業を横軸にとったものである。このマップから、循環技術をめぐる産業間連携のタイプとして、「産業内技術連携」(太枠で囲まれたセル内を見る)、特定の産業が保有する技術を他産業で活用する「シーズ活用型連携」(マップを横にみる)、特定の産業に着目し川上から川下までの循環プロセスでそれぞれ関係する他産業と連携する「循環プロセス補強型連携」(マップを縦に見る)、「類似技術の応用」(個別技術に示されたマークを見る)などが浮かび上がってくる。技術開発の方向性を探るひとつのヒントとしたい。



建築業界における環境ビジネスチャンス 1999.08.15

 ▼建設業界において新たな環境ピジネスのチャンスが一気に拡大しそうだ。99年7月下旬に建設経済研究所が発表した「日本経済と公共投資」によると、2010年の建設業界における環境ビジネスの市場規模は現状(環境ビジネス全体の6%、約5兆4000億円)の5倍、29兆2000!意円へと大幅に拡大すると試算している。▼同研究所は日本建設業団体連合会の加盟各社に対しアンケート調査を実施。その結果、90%以上の会社が環境ビジネスへの参入を組織的に強化していることが判った。中でも「産業廃棄物・処分楊」「リサイクル・再資源化j「建設物の長期使用を図るための技術」「土壌浄化」の分野でとくに今後の需要の伸びを期待している。▼さらに報告書では将来的に拡大が見込まれる環境ビジネス市場において建設各社が持続可能な戦略的経営を図っていくための課題として①発注者ニーズヘの対応②組織の一元化による対応③異業種との連携への対応などを挙げている。また今後、建設産業が環境関連の分野で新たな可能性を広げていくためには「建設産業が持つさまざまな技術やマネジメント能力をフル活用する」とともに新たなノウハウを身に付けることにより異業種との競争力を高めることが求められるとしている▼今回の報告誉の試算は将来予測だが、すでに現実の現場レベルでは建設・土木関連に環境ビジネスは拡充している。建設廃材の地域の循環に限らず、他の廃棄物の地域資源循環、生態系の復元において建設・土木関連の持つ技術、マネジメント能力が発揮され始めていることを現場で動いている私は実感する。