Monday, June 30, 2025

フロン回収制度の限界と不法放出(2006年9月)

フロン回収制度の限界と不法放出(2006年9月)

2006年当時、日本ではエアコンや冷蔵庫などに使用されていたフロン類の回収と管理が、制度上は整備されているはずであった。特に家庭用機器については、2001年に施行された「家電リサイクル法」により、家電4品目の適正処理が義務化され、フロン回収もその一環とされていた。さらに、業務用機器についても2002年の「フロン回収・破壊法」によって回収義務が課されていたが、実態は大きく制度の理念を下回っていた。

この時期、環境省などの調査で明らかになったのは、廃棄時のフロン回収率の低迷である。家庭用では冷媒フロンのほとんどが回収されないまま大気中に放出され、業務用でも違法業者や無資格業者による回収不履行が横行していた。原因は、回収作業にかかるコストを嫌う事業者や、制度の監視体制が非常に緩く、違反しても摘発されるリスクが小さいことだった。

その結果、オゾン層破壊に寄与するクロロフルオロカーボン(CFC)や、強力な温室効果ガスであるハイドロフルオロカーボン(HFC)が大量に放出され、地球規模での環境負荷が懸念された。特にCFCは、国際的には1987年のモントリオール議定書で段階的廃止が合意されていたものの、日本国内の実効的な管理体制は十分ではなかった。

当時の背景には、京都議定書で約束した温室効果ガス削減目標の達成が重くのしかかっており、CO₂に比べてトン当たりの影響が大きいフロン類の排出削減が求められていた。しかし、制度設計と実務の乖離、監督官庁の縦割り行政、そして業界側の消極的な姿勢が、こうした環境破壊の温床となっていた。

この問題は後に「フロン排出抑制法」制定(2015年施行)という形で再構築されるが、2006年時点ではまさに制度の谷間で、温暖化対策の穴となっていた深刻な状況が続いていたのである。

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