『戦後の闇に咲いた火花――浜松抗争事件とその深層』―1948年・静岡県浜松市

『戦後の闇に咲いた火花――浜松抗争事件とその深層』―1948年・静岡県浜松市

昭和23年、浜松の闇市に火花が散った。戦後の混乱が色濃く残るこの街で、地元暴力団「服部組」と在日朝鮮人グループが衝突したのである。事件は数日間にわたり発生し、拳銃や火炎瓶までが飛び交い、街中に不安が広がった。発端は闇市の利権争いとされる。復興途上の街には物資が不足し、闇取引が日常化していた。そこで生活権を守るために台頭したのが、朝鮮人の自警的組織と、旧来の地元暴力団であった。

彼らは単なる犯罪組織ではなく、時代が生んだ「必要悪」であり、国家権力の不在を補うかのように治安や秩序を握っていた。警察と進駐軍（MP）は治安維持のため出動し、ようやく沈静化に至る。だがこの事件は、単なる勢力争い以上の意味を持つ。民族間の摩擦、生存のための武装、そして統治不在の日本社会の裂け目を浮かび上がらせたのである。