江波杏子 男と女のはざまに咲いた赤い花―1960〜70年代
江波杏子は1966年に始まる『女の賭場』シリーズで女賭博師・銀子を演じ、昭和の銀幕に鮮烈な印象を残した。着物に煙草、毅然としたまなざしとふと見せる女の哀しみ。その佇まいは、「男と女のはざまに咲く赤い花」と評されるにふさわしい魅力をたたえていた。1960〜70年代の日本は高度経済成長の裏で、都市化に追われる不安や孤独が漂う時代。銀子というキャラクターは、そんな混乱の時代における女性の強さと儚さを象徴していた。
同時期に活躍した藤純子や梶芽衣子が義理と暴力に生きる女侠として記憶される一方で、江波は情に揺れる繊細な内面を描く女優として異彩を放った。1971年の大映倒産後はテレビドラマにも活躍の場を移したが、その気品と陰影ある演技は衰えを見せなかった。2018年10月27日、肺気腫による呼吸不全で逝去。享年76。昭和という時代の緊張と浪漫を纏った最後の女優のひとりだった。
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