汚れた水と生きる――インド・ヒ素汚染と宮崎大学の草の根協力（2009年2月）

汚れた水と生きる――インド・ヒ素汚染と宮崎大学の草の根協力（2009年2月）

2000年代後半、世界では水質汚染が深刻な環境課題として注目を集めていた。特にインド・ベンガル地方では、地下水に含まれるヒ素による健康被害が蔓延し、皮膚病や内臓疾患を引き起こしていた。そうした現地に、日本の宮崎大学とNPO法人アジアヒ素ネットワークが立ち上がる。彼らはJICAの草の根技術協力として5000万円の支援を受け、現地調査と水源対策を進めた。住民と対話を重ね、汚染井戸の分布を把握しながら代替井戸の掘削地点を選定。地域住民の理解を得ながら、水質改善と自立管理体制の構築を目指した。この支援は、日本がかつて経験した公害問題への共感と反省に基づくもので、先進国の一方的な技術移転ではなく、共に学び合う協力だった。インドの村で井戸を囲んで交わされた言葉の一つひとつが、国境を越
えた信頼の証となっていった。