ロシアのノリリスクでの有害廃棄物漏出
ロシア北部クラスノヤルスク地方のノリリスク市では、2020年5月、ノリリスク・ニッケル(Nornickel)社が所有するCHPP-3発電所から約21000トンのディーゼル燃料が流出する大規模な環境災害が発生しました。燃料は近隣のアンバー川、ダルディカン川を汚染し、最終的にピャシノ湖を通じて北極海まで到達。この事故は、北極圏で記録された最悪の環境災害とされています。
事故原因と影響
燃料流出の主因は、発電所の貯蔵タンクの基礎が永久凍土の融解により沈下したこととされています。この融解は、気候変動に伴う北極圏の平均気温上昇(過去30年間で約2.5℃上昇)が影響しており、地域インフラ全般の老朽化が指摘されています。ディーゼル燃料には有害物質が含まれており、生態系への影響は深刻です。特に、ダルディカン川で水中の石油成分濃度が法定限度を20000倍超過したことが報告されました。
企業の対応と費用
ノリリスク・ニッケル社は、事故直後に清掃作業を開始しましたが、約18000トンの燃料が収集不可能となり、地元環境への長期的な影響が懸念されています。ロシア政府は非常事態を宣言し、同社に清掃と復旧費用として約2200億円の罰金を課しました。同社は2021年までに約2000人を動員し、回収作業を行いましたが、完全な修復には至っていません。
地域住民と生態系への影響
汚染地域では、水質悪化により漁業が壊滅的な打撃を受け、住民の健康被害も報告されています。周辺では、がん発生率や呼吸器疾患の増加が懸念されており、クラスノヤルスク地方政府は住民支援のため特別基金を設置しました。また、ピャシノ湖やアンバー川周辺の生物多様性が大幅に損なわれており、特に魚類や水鳥の生態系に深刻な影響が出ています。
国際的な議論と環境政策への影響
ノリリスクでの事故は、気候変動がインフラ安全性に与える影響を浮き彫りにし、ロシア国内外で議論を呼びました。国際環境NGOであるグリーンピースは、北極圏での工業活動に対する規制強化を求めています。また、ノリリスク・ニッケル社は事故後、新たな環境基準の導入を宣言し、2025年までに温室効果ガス排出量を10%削減する計画を発表しました。
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